内容説明
ニューヨーク州在住の作家マシュー・シャープは、毎週1本、ごく短い形式の小説“超短篇”をウェブ上にアップし続けていった―。1年の間に書き上げられたその52篇に、書き下ろしを加えて再構成、全75篇を一冊に。へんてこだけど繊細、クスッと笑えて、どこか胸を打つ。訳者が「いつか紹介したかった」と語る現代アメリカの作家、初の邦訳短篇集。
目次
家
そう言えば
できない
マジで
オペラ
ある出来事
出会い
でも彼はしなかった
それ
やっと(1)〔ほか〕
著者等紹介
シャープ,マシュー[シャープ,マシュー] [Sharpe,Matthew]
1962年生まれ。ニューヨーク州ラインベック在住の作家。コロンビア、ウェズリアン、バード各大学で創作と文学を教えた。植物人間になりかけた父親を少年が世話するThe Sleeping Father(2003)で2004年に全米インディペンデント出版社図書賞小説部門を受賞
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年生まれ。米文学者、東京大学名誉教授、翻訳家。アメリカ現代作家を中心に翻訳多数。2017年、翻訳の業績により早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。現在、文芸誌『MONKEY』の責任編集を務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
91
ストーリーが短すぎて想像の余地が多分にある。ベッドに横たわる彼はアフガニスタンで戦死した彼の幻覚なのか、顔が潰れて帰還した彼を介護してるのか?ここが義理の両親の家なら後者だろうか。彼女がクリニックで卵子提供したのはもう彼が存在してないからなのか。精子を提供に来た身なりのいい男の一緒に子供を作らないかというジョークは彼女の状況にあってはジョークにならない。ボビーは遠くにいてアルカイダを殺しているなど戦争が日常のアメリカの笑うに笑えない描写。タイトルに込められたものが全体に共通するテーマと言うわけでもないが。2021/07/27
のりまき
14
不思議な世界、でも現実とは離れていない。いつも寂しくせつなく少し優しい。最後の短編が特に好き。『心配ないわ、ダーリン。あたしが迎えに行ってあげるから。』2022/02/23
アヴォカド
12
”奇妙な味”というのともちょっと違うんだよね。オチらしいオチがなかったり、この話そんなふうに流れていくの?と目が点になったりもするんだけど、妙に心地よかったり、ニヤリと笑ってしまったり。印象に残る。『それ』『あの、すみません』『おめでとうございます、男の子ですよ!』あたりが◎だった。(もっとあるけど)2021/07/16
ふみふみ
8
不思議感覚派とでも呼べばいいのでしょうか、軽い語り口に、コノテーションを読み取るのが極めて困難な、「考えるな感じろ」的な75編の奇妙な超短編集。ちょっと私には良さがわからなかったです、残念。2023/06/19
ねむ
8
ごく短い独立した短篇がたくさん。どれも不思議なストーリーというか、ほへ?と戸惑うような展開が多く、最初のほうはなんだかのれない感じで読んでいたのだけれど、だんだん面白くなってきた。訳者あとがきに「読み進めていくなかで、驚き呆れ感嘆する思いは、出来事や展開自体の珍妙さから、その珍妙さを語る語り口の方に移っていく」とあるのを見て、なるほど語り口に引きこまれて面白く感じてきたんだな、と納得した。そういうところを自分で考えて感想に書けない自分が情けなくもあるのだけれど。まじめな顔で変な話をする叔父さんという印象。2021/08/08