出版社内容情報
手本となる科学研究の道を歩み
オノマスティックスの名にふさわしい(業績)
柴田 武
アイヌ語地名のすばらしい研究が四巻の著作集にまとまった。いままでのアイヌ語地名の研究は、しばしば好事家の手によって、日本全国の地名をアイヌ語で説こうという眉つば物が少なかった。しかし、山田秀三氏のアイヌ語地名の研究は、それらとは全く別のものである。一口に言って、オノマスティックス(地名・人名研究)の名にふさわしい、科学的なものである。
この著作集に収められている『東北と北海道のアイヌ語地名考―山河を愛する人々に捧ぐ』(1958年)という著書に寄せられた金田一京助氏の序によると、「前仙台鉱山監督局長山田秀三学士……」とある。山田氏はおそらく公務のために東北地方の山河を足で歩いているうちに、何とも不思議な地名の存在に気づき、これはアイヌ語ではないかと疑い出したことから研究が始まった。
これは、およそ科学的な研究にとって実にまともな出発点であった。ことがらの観察から疑問がわき、それを解決するために仮説をたて、現地に足を運んで地形とつき合わせると、という、お手本のような科学研究の道を歩んでおられる。鉱山学でも修められ年前にすでにそういうことのできるアイヌ語話者が見つからなかったからであろう。(中略) ↓へ続く
(1983.7.11 日本読書新聞)
第一部 東北地方のアイヌ語地名
東北と北海道のアイヌ語地名考
十三潟のアイヌ語系地名
下北の旅の記録
津軽半島の記藤
津軽の状村の記嶽
コンナイという地名
東北のアイヌ地名の旅
第二部 北海道南部のアイヌ語地名
北海道の旅と地名 函館一室蘭―札幌
登別、室蘭のアイヌ地名を尋ねて
" (↑から続く)
山田氏はもともと地名研究のためにアイヌ語地名をとりあげたのではない。また、日本の古代文化を明らかにしようとしてアイヌ語地名にとりくんだのでもない。東北地方の不思議な地名に出会って、それを説くために、余暇の仕事として始められたことである。また、地名研究、古代史研究、言語学、民族学などの学問的、人脈的系列の外で仕事をして来られた。そのために、金田一京助、知里真志保というアイヌ語学の権威に対しても堂々と反論を展開している。ナイについても、知里の朝鮮語説を退けている。山田氏の研究が真に科学的な研究になりえたのはこういう環境が幸いしている。研究に、その文章にけれん味のないのもそのためである。
著作集に収められた著書や論文はいずれも特殊な出版社や小さな雑誌に発表されたものばかりである。「ぷやら新書」、「うとう」「深川市史」といったものに出た論文はもとのものに当たることなどはきわめて困難である。それがこうした一つの著作集としてまとまったことは、何としてもありがたいし、出版としても有意義なことだったと思う。
40年間の研究でとりあげられたアイヌ語地名はおびただしい数になろうが、そのうちの6,500ほど"
目次
第1部 東北地方のアイヌ語地名(東北と北海道のアイヌ語地名考;十三潟のアイヌ語系地名;下北の旅の記録;津軽半島の記録;津軽の〓村の記録;コンナイという地名;東北のアイヌ語地名の旅)
第2部 北海道南部のアイヌ語地名(北海道の旅と地名 函館‐室蘭‐札幌;登別・室蘭のアイヌ地名を尋ねて)
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