内容説明
本書は国宴、高級レストラン、夜市、庶民の食卓にのぼるさまざまな料理を紹介しつつ、「台湾菜(台湾の料理)」という概念が100年の間にいかに定義され、表現され、実践されてきたかを検証するものである。日本の台湾統治と第2次大戦後の権威主義的政権もまた、多くの新たな飲食の要素を台湾に持ちこみ、民主化後の、現在の「台湾」を形づくってきた。つまり「台湾料理」とは何かを問うことは、まさにこの100年余にわたって台湾社会がいかに大きな変化を経てきたかを理解することなのである。
目次
序 私の台湾菜の旅
第1章 序論 「台湾菜」の文化史
第2章 植民地の高級料理―日本統治期の「台湾料理」の誕生
第3章 古来の台湾の味―庶民の食卓
第4章 移植と混交―戦後書き換えられた飲食地図
第5章 エスニシティ、階級と飲食「伝統」の創造
第6章 台湾菜と「故郷の味」―家および文化的記憶の変遷
第7章 結論 ガラスの容器のなかの台湾菜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
115
どの国でも政治と料理は深く結びついているが、台湾はその極端な例だ。日本の植民地時代は日本料理が高級品とされ、庶民の味は格下の台湾料理と総称された。戦後に国民党が移ってくると今度は大陸料理が上級国民の食となったが、独立派政権になると一転して旧台湾料理こそ国民料理たる「台湾菜」と持ち上げられた。政治の都合で様々な料理を押しつけられてきた21世紀の今日では欧米やアジアの料理も進出し、様々な料理が融合した台湾原産食材の料理が新しい伝統とされているらしい。ようやく好みの料理を自由に食べられる、普通の時代が訪れたか。2024/09/06
榊原 香織
109
飲食エクリチュール、ん、やっぱりソシュールとか使って分析するんですね。食文化がユネスコ無形文化遺産になる時代ですもんね。 力作です。 博士論文加筆修正。 最近台湾関係の出版物多いなあ2024/10/09
志村真幸
1
本書は、台湾料理について、歴史的な側面を中心に、政治、個人史、文学、民俗、階級など、さまざまな切り口から論じたもの。 台湾料理が日本統治下でいかにしてつくりだされたかという第2章が興味深かった。 第二次大戦後から20世紀末にかけて、急速に変化していく過程も巧みに論じられている。中国本土からの大量の移入者によって、台湾という国自体が大きく変化し、料理の位置づけも変わる。さらに、21世紀になる頃に、もともとの「台湾」への揺り戻しが始まり、政治的手段として台湾各地の料理にスポットが宛てられたという点も。 2025/04/01
takao
1
ふむ2024/12/09