内容説明
権力者が所望する原作を所有者は恭順のしるしに献上し、権力者は召し上げた作品の代わりに下賜する複製画を画家に発注する―こうした事例のように、収集熱が高まった時代、高位聖識者、王侯貴族、裕福な商人たちにとって傑作の複製は大きな意味をもっていた。これまで関心のそとに置かれがちだった複製画に着目して行われた一次資料の詳しい調査が、芸術都市フィレンツェにおける美術作品をめぐる生々しい営みを浮かび上がらせる。所有の欲望をみたす複製画の諸相。
目次
第1章 複製絵画史の一般概説
第2章 17、18世紀のトスカナ大公国の絵画収集における複製絵画―メディチ家フェルディナンド大公子の収集家としての情熱について
第3章 フィリッポ・バルディヌッチ『素描家消息』に描写されたヤコポ・ダ・エンポリの複製制作と17世紀メディチ家の収集活動
資料編
著者等紹介
小佐野重利[オサノシゲトシ]
1951年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退、同大大学院人文社会系研究科教授、研究科長・文学部長を経て退職。イタリア連帯の星騎士・騎士勲位章(2003年)、イタリア星騎士、コメンダトーレ勲位章(2009年)を受章、国際美術史学会(CIHA)前副会長。東京大学名誉教授、同大特任教授、アンブロジャーナ・アカデミー(ミラノ)会員、日本学術会議会員。著作・展覧会カタログ監修多数
浦一章[ウラカズアキ]
1959年生まれ。1994年より東京大学文学部・大学院人文社会系研究科の助教授、准教授としてイタリア語イタリア文学を講じ、2010年より教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。