内容説明
独自の文体を生涯求め続けた中井英夫初のベストセレクションで編まれた“自伝”。『虚無への供物』の後日譚「空しい音」に、執筆当時の苦悩を綴る日記「虚無なる日々に」を収録。幻想と耽美に彩られた21篇。
著者等紹介
中井英夫[ナカイヒデオ]
1922年東京・田端に生まれる。東大在学中に吉行淳之介、椿實らと第14次『新思潮』を創刊。『短歌研究』『短歌』編集長として葛原妙子、塚本邦雄、中城ふみ子、寺山修司、春日井建らを発掘。1964年塔晶夫名義で『虚無への供物』を刊行。「文学の特別席」(埴谷雄高)として、現在に至るまで日本の文学界に深甚な影響を及ぼす。1974年『悪夢の骨牌』で泉鏡花文学賞。エッセイ、日記、短歌論集、詩集など、多彩な著作と彫心鏤骨の文体で、稀有の文学世界を展いた。1993年没。享年71(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コットン
66
SIGERUさんお薦めの21作品からなる傑作短編集。自分自身の消失譚物語の『嘆きの夜』、少年が消える『夕映少年』など面白い。2017/10/21
シガー&シュガー
14
中井の余りに強い自意識が整った文章によってさらに輝きを増され息苦しさを感じる一冊。読み終えるのに相当な体力が要る。「名無しの森」「干からびた犯罪」は初読の頃の衝撃が褪せない大好きな作品。これに似たような筋立ての作品も世にはあるかと思うが押し隠した上にもうっすら浮かび上がる血痕のようなエロティシズムが隙なく整った文章の間に見え隠れするこれらはやはり稀有なもの。三島に関する日記で読み疲れがピークに達したところで牟礼田と蒼司が立ち現れるという編集に泣いてしまった。素敵なセレクトだった。2017/04/13
藤月はな(灯れ松明の火)
8
「禿鷹」や日記など現実のことを書いているのに幻想小説のような文体にも酔わされます。「黒鳥譚」は坂口安吾氏の「堕落論」に通じるものがあると思います。個人的にお気に入りの「公園にて」が収録されているのが嬉しかったです^^2012/03/07
にゃんころっく
3
初めての中井英夫さんの本です。短編集ですが、詩や日記など読み飽きません。 「見知らぬ旗」という短編がとても印象深く、最初に読みたいと思っていた「虚無への供物」がとても楽しみになりました。 現実味のあるお話だな、と思って顔を上げると違う世界を浮流しているような不思議な感覚です。2014/06/26
:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
2
虚無おじ、とってもイイ。予想外にいい短編集、というかエッセイのような小説のような、盛りだくさん。芥川次男と幼少期一緒に遊んだ話とか、太宰、三島由との話とか、あの時代の作家は印象的。11月25日、最初の長編「仮面の告白」を起稿、その22年後、豊饒の海完成・自殺。虚無への供物を読む前に、その後日譚と制作時の日記を読んでしまった。虚無は、どうせ小難しい話だろうと避けていたが、面白そう。2025/08/18




