出版社内容情報
★ワイヤレス通信向けの新しいアプリケーションとして注目!
★携帯電話や無線LANなどの高周波帯への応用が活発化!
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最近,低損失なRFスイッチやRFバラクタを実現できる技術としてRF MEMS技術が注目されている。MEMS技術は半導体集積回路技術にMEMS固有のプロセス技術を付加することにより,基板上で機械的動作可能な構造を実現するものである。MEMSによりマイクロセンサ,マイクロアクチュエータ,光スイッチ,バイオチップ,ケミカルチップなどの分野で多くの革新的なデバイスが生み出されてきた。
RF MEMSはこのMEMS技術をマイクロ波・ミリ波帯で使用される無線通信用部品に応用したものである。RF MEMS技術により低損失,高Qのスイッチ,バラクタ,インダクタ等の部品が開発された。さらに,これらスイッチやバラクタを使ったチューナブルフィルタ,フェーズシフタなどの回路も開発され,可変RFフロントエンドシステムやフェーズドアレイレーダなどへの応用の期待が高まっている。RF MEMS技術はまさに,ワイヤレス時代のキーテクノロジーと位置付けられよう。
本書は我が国におけるRF MEMS研究開発の最前線を紹介するものである。各章を最前線の研究者が執筆し,これからRF MEMSの開発に取り組む若手開発者やRF MEMSの知識を深めたい応用分野の担当者を対象にRF MEMS技術とその応用分野についてわかりやすく説明する。
本書が読者のRF MEMSデバイス開発の一助になれば,著者らの幸いである。(巻頭言より抜粋)
2006年4月 大和田邦樹
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大和田邦樹 国際標準化工学研究所 所長
前田龍太郎 (独)産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 グループ長
小林健 (独)産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 研究員
神野伊策 京都大学 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 助教授
三原孝士 オリンパス(株) 未来創造研究所 研究コーディネーター
鈴木健一郎 立命館大学 理工学部 マイクロ機械システム工学科 教授
佐野浩二 オムロン(株) 技術本部先端デバイス研究所 マイクロマシニンググループ 主事
曽田真之介 三菱電機(株) 先端技術総合研究所 センシング技術部 MEMSプロセスグループ 研究員
中谷忠司 (株)富士通研究所 ストレージ・インテリジェントシステム研究所 メディアデバイス研究部 研究員
中西淑人 松下電器産業(株) ネットワーク開発センター 主任技師
佐藤良夫 (株)富士通研究所 フェロー
吉田幸久 三菱電機(株) 先端技術総合研究所 センシング技術部 MEMSプロセスグループ 専任
李相錫 三菱電機(株) 先端技術総合研究所 センシング技術部 MEMSプロセスグループ Research Scientist
寒川潮 松下電器産業(株) 先端技術研究所 研究員
楢橋祥一 (株)NTTドコモ ワイヤレス研究所 無線回路研究室 室長
原晋介 大阪市立大学 大学院工学研究科 教授
チャントゥアンコク 大阪大学 大学院工学研究科 大学院生
中谷勇太 (株)富士通研究所 ワイヤレスシステム研究所 RFソリューション研究部 研究員
井田一郎 (株)富士通研究所 ワイヤレスシステム研究所 RFソリューション研究部 研究員
大石泰之 (株)富士通研究所 ワイヤレスシステム研究所 RFソリューション研究部 部長
中村陽登 (株)アドバンテスト研究所 第2研究部門 RF部品研究室
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目次
【I 総論】
第1章 MEMS技術の概要(大和田邦樹)
1. MEMSとは
2. MEMS開発の歴史
3. MEMSのグループ別代表デバイスと応用分野
4. MEMS技術の特徴,技術分野と専門用語
5. MEMSの国際標準化
第2章 RF MEMS技術の概要(大和田邦樹)
1. RF MEMSとは
2. RF MEMS開発の歴史
3. RF MEMSの構造例
4. RF MEMSの利点
4.1 RF MEMSとGaAs回路,SiGe回路,またはCMOS回路との集積化
4.2 RF MEMSのリニアリティと相互変調歪積
【II プロセス技術】
第1章 プロセス基盤技術(前田龍太郎,小林健)
1. はじめに
2. マイクロマシニングの流れ
3. ウエハ準備
4. 成膜(付着加工)
4.1 熱酸化(シリコン酸化膜の成膜)
4.2 CVD法
4.3 物理蒸着法
4.4 めっき法
4.5 アディティブ法とサブトラクティブ法
4.6 ドーピング
5. フォトリソグラフィーによる微細パターニング
6. 除去加工(エッチング)
6.1 ウエットエッチング
6.2 ドライエッチング
6.3 サーフェスマイクロマシニング
7. パッケージング
7.1 ウエハレベルパッケージの重要性
7.2 ウエハレベル接合
7.2.1 陽極接合(Anodic Bonding)
7.2.2 シリコン直接接合(Silicon direct bonding or fusion bonding)
7.2.3 その他の結合
7.3 封止したデバイスからの電気配線のとりだし
第2章 RF MEMSのプロセス技術(前田龍太郎,小林健)
1. はじめに
2. RFスイッチのプロセス技術
3. RFフィルターのプロセス技術
4. 圧電膜の製造法
第3章 圧電薄膜を用いたRF MEMSスイッチの開発(神野伊策)
1. はじめに
1.1 圧電マイクロアクチュエータ
1.2 圧電駆動MEMSスイッチの特徴
2. 圧電薄膜成膜プロセス
2.1 薄膜材料
2.2 成膜プロセスの特徴
2.3 スパッタ法によるPZT圧電薄膜の形成
2.4 圧電特性評価
3. RF MEMSスイッチの作製プロセス
4. アクチュエータ特性
5. スイッチング特性
6. おわりに
第4章 MEMSファンドリーサービス(三原孝士)
1. はじめに
2. RF MEMSの特徴とファンドリーへのアプローチ
3. MEMSファンドリーインフラ,およびそのネットワークの必要性
4. MEMSファンドリーネットワークの誕生と活動
4.1 MEMSファンドリーサービス産業委員会の誕生
4.2 MEMSファンドリーサービス産業委員会の活動
5. 産業委員会メンバーのサービス内容の簡単な紹介
6. RF MEMSとしてファンドリーを利用する場合の注意事項
6.1 どのような段階からファンドリーサービスに依頼するのか?
6.2 個別部品型か? 集積化MEMSか?
6.3 MEMSスイッチの場合はアクチュエータを何に選ぶか?
6.4 共同研究・開発の分担をどうするか?
6.5 量産を前提としているか?
7. おわりに
【III 設計技術】
第1章 MEMS構造体の力学的設計技術(鈴木健一郎)
1. はじめに
2. 静的解析
2.1 静電気力
2.2 ばねの復元力
2.3 静的釣り合い
3. 駆動電圧低減化のための設計
3.1 ばね定数を変化させる方法
3.2 駆動電圧を印加する場所を変化させる方法
3.3 構造体を両側に変位させる方法
4. マイクロスイッチ設計の実例
5. 動的解析
6. 解析シミュレーションソフトウェア
第2章 MEMS構造体のRF設計技術(鈴木健一郎)
1. はじめに
2. RF平面導波路
2.1 表皮効果
2.2 コプレーナ導波路
3. Sパラメータ
4. 並列型スイッチ
5. 直列型スイッチ
【IV デバイス技術】
第1章 単結晶シリコンメンブレン型スイッチ(佐野浩二)
1. はじめに
2. 設計
2.1 デバイス構造
2.2 静電アクチュエータ設計
2.3 パッケージ設計
2.4 高周波線路設計
3. 製造プロセス
4. 評価結果
5. おわりに
第2章 線路駆動型スイッチとメタルカンチレバー型スイッチ(曽田真之介)
1. はじめに
2. 線路駆動型MEMSスイッチ
2.1 構造
2.2 作製プロセス
2.3 周波数特性
2.4 耐電力試験
3. メタルカンチレバー型MEMSスイッチ
3.1 構造
3.2 作製プロセス
3.3 高周波特性
3.4 耐電力試験
第3章 単結晶シリコンカンチレバー型スイッチ(中谷忠司)
1. はじめに
2. 素子構造と特長
3. 作製プロセス
4. 素子特性
5. おわりに
第4章 簡易トリプル電極構造スイッチ(中西淑人)
1. はじめに
2. スイッチの現状と課題
3. 低駆動電圧・高速スイッチの検討
3.1 簡易トリプル電極構造スイッチの考案
3.2 基本Design
3.3 櫛歯部Design
3.4 Materials Selection and Characterization
3.5 Fabrication
3.6 Measurement
4. おわりに
第5章 FBARフィルタ(佐藤良夫)
1. FBARの構造と特徴
2. FBAR(SMR)開発の歴史
3. 富士通研究所におけるFBARの開発
3.1 開発の背景
3.2 圧電薄膜とその製造方法
3.3 電極膜について
3.4 空洞の形成方法について
3.5 ラダー型フィルタの設計方法について
3.6 パッケージについて
3.7 特性およびSAWフィルタとの比較
4. おわりに
第6章 受動回路素子(吉田幸久)
1. はじめに
2. 中空伝送線路
3. 集中定数型ハイブリッド回路
第7章 Dielectric-Air‐Metalキャビティ構造によるソレノイドインダクタと遅延線路(李相錫)
1. はじめに
2. デバイス構造および作製プロセス
2.1 開発背景
2.2 デバイス構造
2.3 作製プロセス
3. 試作結果
4. 高周波特性
5. おわりに
【V 応用技術】
第1章 60GHz帯送・受信フロントエンドモジュール(寒川潮)
1. はじめに
2. 60GHz帯送・受信フロントエンドモジュールの設計コンセプト
3. 60GHz帯送・受信ハイブリッドIC
3.1 フロントエンド回路ブロック構成
3.2 線路・配線構造
3.3 インバーテッドマイクロストリップ線路
3.4 MSLとIMSL間の線路変換器
3.5 IMSLによるバンドパスフィルタ
3.6 IMSLによる放射器
3.7 フリップチップ実装と実装部構造
3.8 送信モジュールの筐体への実装
4. 誘電体レンズ
5. おわりに
第2章 高効率デュアルバンド増幅器(楢橋祥一)
1. はじめに
2. モバイルユビキタス
3. モバイルユビキタスと移動端末の技術課題
4. 電力増幅器のマルチバンド化
4.1 電力増幅器
4.2 マルチバンド化
5. 帯域切替型整合回路を備えた高効率電力増幅器
5.1 帯域切替型整合回路の動作原理
5.2 スイッチの特性が与える影響
5.3 提案構成の特徴
5.4 MEMSスイッチの適用
6. 900MHz/1900MHz帯デュアルバンド電力増幅器
7. おわりに
第3章 RF MEMSを用いた無線通信端末用適応アンテナ(原晋介,チャントゥアンコク,中谷勇太,井田一郎,大石泰之)
1. はじめに
2. フェーズドアレーアンテナ
3. アンテナ選択ダイバーシティアンテナ
4. おわりに
第4章 計測器応用(中村陽登)
1. はじめに
2. 測定の対象と計測器
2.1 周波数とアプリケーション
2.2 計測器の構成とデバイス
3. RF MEMSの計測器への応用
3.1 VCO(発振器)
3.1.1 VCO
3.1.2 周波数固定の発振器
3.2 フィルター
3.3 プローブ
3.4 スイッチ
3.4.1 スイッチの役割と具備条件
3.4.2 RF MEMSリレーの種類
3.4.3 それぞれの特徴
3.4.4 RF MEMSスイッチの問題点
4. おわりに
目次
1 総論(MEMS技術の概要;RF MEMS技術の概要)
2 プロセス技術(プロセス基盤技術;RF MEMSのプロセス技術 ほか)
3 設計技術(MEMS構造体の力学的設計技術;MEMS構造体のRF設計技術)
4 デバイス技術(単結晶シリコンメンブレン型スイッチ;線路駆動型スイッチとメタルカンチレバー型スイッチ ほか)
5 応用技術(60GHz帯送・受信フロントエンドモジュール;高効率デュアルバンド増幅器 ほか)
著者等紹介
大和田邦樹[オオワダクニキ]
国際標準化工学研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。