内容説明
知られなかった、語られなかった市井の暮らし、修養、矜持、哀歓、奇談…。稀代のコレクション三河・岩瀬文庫収蔵の2万余点からえり抜く古書に秘められた人生模様。実は、古書大国・日本。大部分は江戸時代に作られ、200年以上続いた平和と高い識字率の産物だ。古書世界を逍遙すれば、時空を超えて、かの時代の息吹と人々の生活が見えてくる。
目次
1章 義と理あらばこそ
2章 奇談・笑話
3章 士道覚悟
4章 西鶴の視線
5章 健養・保寿
6章 記録の愉楽
終章 岩瀬文庫のあとさき
著者等紹介
塩村耕[シオムラコウ]
名古屋大学大学院人文学研究科教授(日本文学)。1957年兵庫県生まれ。東京大学文学部国文学専修課程卒。専門は井原西鶴を中心とした近世前期文学、書物文化史など。2000年より岩瀬文庫の書誌データベース作りに没頭、2010年11月より「古典籍書誌データベース」のインターネット公開を開始(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
91
文字の意義と意味を再認識。学問などの堅苦しさのみならず、生活様式や嗜好の変化などの変遷を知るのは、様々なルーツを知るかのようで興味深い。『藩医松浦元瑞の手紙』の鰆に、不変の親の子を思う心。『山田家秘伝巻物』の”家”の重み。『上杉軍記』の”知恵”に、思わず唸る。『軽口七福神』や、師宣の『山雲子の噺本』の挿絵も趣がある。思わず笑ったのは、『屁の力』。陽物比べに放屁合戦?!おこ絵は秀悦。源内の”屁文学”も意外性。言葉を挙げると、「忖度」、「御」、そして「心中」。由来を踏まえた正しい使い方を心掛けたいと自省。2021/02/01
onasu
26
本邦では、江戸時代が200年以上にわたって平和で、庶民でも(相対的に)識字率が高かったことから、特に近世以降の古文書が多い古書大国なのだとか。 ただ、多くは娯楽用だと思うので、こちらで該当するのは井原西鶴+αくらいだが、どしどし棄てられているであろう、硬軟取り混ぜた江戸時代の古文書を紹介してもらえるのは嬉しい。 手紙を読めば、当時の生の様子が伝わってくる、戦前までは名家の墓石の文字を収拾する趣味があったが、古い墓石を流用する悪寺もあった等はおもしろかったが、もう少し取っつき易い内容の方がよかったか。2020/09/02
しゅー
4
★★新聞の書評で目をひかれたので読んでみた。二ページ見開きで完結したコラムのような形式となっているのでどこからでも読めるし、肩の凝らない気軽な読み物である。西鶴とか『徒然草』(江戸のベストセラー)みたいな有名どころも出てくるが、本書の本領は我々が名前も知らない埋もれた学者とか一般の人々の書簡のように種々雑多な資料から著者が読みとく江戸の姿だろう。自分で古書を紐解く力のない身としては、ありがたいの一言につきる。むやみに江戸を礼賛するでもなく、語る対象との適度な距離感も心地よい。『さらに秀逸な怪談』にニヤリ。2021/02/11
Riko
1
図書館で借りた2021/01/05