出版社内容情報
社会包摂とは「社会的排除を生みだす諸要因を取り除き、人々の社会参加を進め、他の人々との相互的な関係を回復、あるいは形成すること」を指し、90 年代後半よりEU における都市再生の目標の一つにも掲げられてきたものである。
そして「レジリエンス」とは都市の社会変化に対する適応力、柔軟性、回復力の意味を持ち、近年都市社会学を語る上で非常に重要視されている。
本書では包摂型創造都市論、アートによる社会包摂、包摂都市と居住福祉などをテーマに、不安定な生活基盤や社会関係をどうするべきか。また相次ぐ大規模な自然災害リスクに対し「21 世紀型のレジリアント( 復元力に富んだ) 都市」はどのようにあるべきかを日本及び東アジアの事例に基づき多方面から提言する。
設立から10 年、都市研究プラザを中心に蓄積してきた多くの都市関連の研究や学術資源。また国内外の共同研究機関や関連研究者コミュニティと築いてきた成果と、これからの都市のあるべき姿を考える。
第?部 包摂型創造都市とレジリエンス都市の創生
はじめに[阿部昌樹]
第1章 レジリエントな創造都市に向けて[佐々木雅幸]
第2章 復元力(レジリエンス)・文化編集・世界遺産:創造的な述語(動詞)で編集・包摂する[岡野浩]
第3章 包容力ある都市論を構想する ―東アジア包摂都市論のさらなる転回を通じて―
第4章 就労なき社会的包摂の可能性[阿部昌樹]
第5章 民族関係論の成果と課題[谷富夫]
第6章 近世大坂の非人集団の生存環境と家[塚田孝]
第?部 都市空間再生に向けた包摂型アートマネジメントと多文化都市
はじめに[岡野浩]
第7章 アジアを視野にいれた社会包摂型アーツマネジメントの形成に向けて[中川眞]
第8章 都市の忘却空間となった水都再生 ―水都大阪の挑戦―[嘉名光市]
第9章 生きた建築ミュージアムによる大阪の都市再生[高岡伸一]
第10章 大阪の長屋保全まちづくり ―この10年の振り返り[藤田忍]
第11章 まちとエスニックマイノリティと包摂[鄭栄鎭]
第?部 包摂型アジア都市と居住福祉実践
はじめに[全泓奎]
第12章 東アジア都市における生産主義福祉モデルと居住福祉の実践[全泓奎]
第13章 東アジアにおける貧困と社会政策[五石敬路]
第14章 包摂型アジア都市への「中間的社会空間」試論[穂坂光彦]
第15章 居住福祉を基調とした地域福祉施策における専門職の役割[野村恭代]
第16章 参加型仕事づくりの試みから明らかになる労働観と外部者の役割[綱島洋之]
第17章 都市内格差社会における社会的包摂のチャレンジ ―理論的背景を中心に―[コルナトウスキ・ヒェラルド]
あとがき[水内俊雄]
【執筆者】
第1章 佐々木雅幸(ささき・まさゆき)
同志社大学特別客員教授/大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員
第2章 岡野浩(おかの・ひろし)
大阪市立大学都市研究プラザ教授/同 大学院経営学研究科兼任
第3章 水内俊雄(みずうち・としお)
大阪市立大学都市研究プラザ副所長・教授/同 大学院文学研究科兼任
第4章 阿部昌樹(あべ・まさき)
大阪市立大学都市研究プラザ所長/大学院法学研究科教授
第5章 谷富夫(たに・とみお)
甲南大学文学部教授/大阪市立大学名誉教授/都市研究プラザ特別研究員
第6章 塚田孝(つかだ・たかし)
大阪市立大学大学院文学研究科教授/都市研究プラザ特別研究員
第7章 中川眞(なかがわ・しん)
大阪市立大学大学院文学研究科教授/都市研究プラザ兼任研究員
第8章 嘉名光市(かな・こういち)
大阪市立大学大学院工学研究科准教授/都市研究プラザ兼任研究員
第9章 高岡伸一(たかおか・しんいち)
大阪市立大学都市研究プラザ特任講師
第10章 藤田忍(ふじた・しのぶ)
大阪市立大学大学院生活科学研究科教授/都市研究プラザ兼任研究員
第11章 鄭栄鎭(ちょん・よんぢん)
大阪市立大学都市研究プラザ特任助教
第12章 全泓奎(じょん・ほんぎゅ)
大阪市立大学都市研究プラザ教授/同 大学院創造都市研究科兼任
第13章 五石敬路(ごいし・のりみち)
大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授
第14章 穂坂光彦(ほさか・みつひこ)
日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センター長/大学院国際社会開発研究科特任教授/大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員
第15章 野村恭代(のむら・やすよ)
大阪市立大学大学院生活科学研究科准教授
第16章 綱島洋之(つなしま・ひろゆき)
大阪市立大学都市研究プラザ特任助教
第17章 コルナトウスキ・ヒェラルド(Kornatowski Geerhardt)
大阪市立大学都市研究プラザ特任助教
大阪市立大学都市研究プラザ[オオサカシリツダイガクトシケンキュウプラザ]
「21世紀型のレジリエンス(復元力に富んだ)都市」のあるべき理念モデルと実践モデルの彫琢を進めている。2006年設立。2014年度より文部科学省・共同利用・共同研究拠点「先端的都市研究拠点」認定。あわせて「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業~スタートアップ支援」の対象拠点に採択され、都市研究における先端的取組をスケールアップしていくための連携型拠点としての整備を図ってきた。
内容説明
「21世紀型のレジリエンス都市」のあるべき姿を探る、学際研究拠点10年の総和。大阪市立大学都市研究プラザ10周年記念論文集。
目次
第1部 包摂型創造都市とレジリエンス都市の創生(レジリエントな創造都市に向けて;復元力・文化編集・世界遺産:―創造的な述語(動詞)で編集・包摂する
包容力ある都市論を構想する―東アジア包摂都市論のさらなる転回を通じて
就労なき社会的包摂の可能性
民族関係論の成果と課題
近世大坂の非人集団の生存環境と家)
第2部 都市空間再生に向けた包摂型アートマネジメントと多文化都市(アジアを視野にいれた社会包摂型アーツマネジメントの形成に向けて;都市の忘却空間の再生―世界の水都再生と水都大阪の挑戦;生きた建築ミュージアムによる大阪の都市再生;大阪の長屋保全まちづくり―この10年の振り返り;まちとエスニックマイノリティと包摂)
第3部 包摂型アジア都市と居住福祉実践(東アジア都市における生産主義福祉モデルと居住福祉の実践;東アジアにおける貧困と社会政策;包摂型アジア都市への「中間的社会空間」試論;居住福祉を基調とした地域福祉施策における専門職の役割;参加型仕事づくりの試みから明らかになる労働観と外部者の役割;都市内格差社会における社会的包摂のチャレンジ―理論的背景を中心に)