内容説明
冷戦が終結したからといって、戦争のない時代を人類は迎えることができたわけではない。必要なのは、政治的暴力にたいする新たな批判理論の構築である。近現代の政治的暴力の根源を問う。
目次
1 国家、社会、近現代史
2 伝統的国家―支配と軍事力
3 伝統的国家―官僚制、階級、イデオロギー
4 絶対主義国家と国民国家
5 資本主義、工業主義、社会変容
6 資本主義と国家―絶対主義から国民国家へ
7 管理的権力、国内の平定
8 階級、主権、シティズンシップ
9 資本主義の発達と戦争の工業化
10 地球規模の国家システムにおける国民国家
11 モダニティ、全体主義、批判理論
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
20
近代以前の伝統的国家というのは、基本的に、政治中枢の世界と普通の例えば農民の世界とはあまりに遠くて、その農民には国がどうこうなんて意識もほとんどなかった。国民が国境を持った国の中でその国や近隣国を意識しながら政治がどうこうと言うのは、近代国民国家にとりわけ特徴的な物事だ。ギデンズの社会理論の特徴である前近代と近代の区分、伝統的国家から近代国民国家への変容が一番包括的に述べられている。特に、経済一元的なマルクスの唯物史観に抗い「軍事秩序の発展」と、暴力にも力点を置いた分析で面白い2014/12/16
八八
5
国民国家における暴力とは?アンソニー・ギデンズは有名なイギリスの社会学者である。その著者が国民国家と暴力=軍隊・警察の関係について考察する。国民国家は人類の歴史を通して今までに無いほどの結集力と様々な面に渡る監視・管理の体制を実現している。ギデンズは歴史を振り返りながら近代国家が暴力を独占し工業の発展がさらに軍隊を純粋化し近代社会に変動をもたらしていく。マルクスを引用しつつ批判し且つ社会学者の論を引用しながら論じる。一読するだけでは理解が及ばない大著、内容を振り返りながら読み直していきたい。2020/02/26
谷口裕貴
1
国際政治演習で取り扱った本。来週の月曜までにレジュメを作らないと…管理とか軍隊とか制度とかナショナリズムとか歴史とかあらゆる素養が必要で、何を言ってるかわからんことがしょっちゅうです。マルクスを批判しようとして、意識をしすぎているがゆえに、マルクス的な議論の展開がなされていると、階級闘争とか労働の商品化とか…こういう類の本は何度読んでももやもやすると思うけど、自分の中でその時に考えていることに思い当たる節がたくさん登場してくるんだと思うな。理解するってなんだろうってなる。2012/11/28