内容説明
世界的超ベストセラー『バラの名前』であり、記号論の世界的学者でもある怪人に、三人の気鋭が果敢に挑戦する。本書の白眉は、『バラの名前』の発表以前に、“小説家”エコの出現を予期させる言葉を引き出しているパンコルボのインタヴューである。
目次
1 記号論の魔術
2 『バラの名前』から『フーコーの振り子』へ
3 講壇から、ピッツァ専門店から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiroizm
13
3人の聞き手によるインタビュー集。読んだ理由はノーベル文学賞候補のセース・ノーテボームがインタビューアーの一人だったから。セースさんは高卒後世界を旅しながら作家になったアカデミック外の人だが、この本によれば「薔薇の名前」出版後のエコさんと、オランダのオカルト等超マニアックな専門古書店をガイドして仲良くなったらしく、なかなか侮れない。二人の対話は当時出版された「フーコの振り子」に関する話がメイン。ジョイスやオーディン、ボルヘスの言及から名士主催のパーティの場でのエコの様子まで興味深い内容。2020/12/24
またの名
10
産婦人科医でも性行為するのに支障無いように、対話相手が発する仕草から一瞬のズレまでのあらゆる現象を分析し体系化してしまっても普通に推理小説を楽しめると語る、記号学者にしてベストセラー小説の著者。猫が象と対置すれば小さな可愛さを表しネズミに対しては残忍な力を象徴するのは、記号に神秘など無く多少複雑なルールに従ってるだけと説くと、魔術的な語り得ぬものを擁護したいインタビュアーが反発。ついには「マリファナを吸ったりLSDを打てば、不完全な人間世界を超えた最高の満足を得られるんじゃないですかね」とエーコが皮肉る。2024/11/14
roughfractus02
5
エーコがイタリア人、ドイツ人、オランダ人の3人のインタビューに答える本書は、映画による記号論の紹介から始まり、『薔薇の名前』と『フーコーの振り子』に関してエンタメでも歴史小説でもない作者と読者の現実に沿ったアクチュアルな読み方を間接性という概念を仄めかし、左翼関連が一掃されてオカルト本に鞍替えした70年代の書店の本棚に意図と行為の直接性の変容を見る。『フーコーの振り子』での3つのフィルターを通した語りは、直接性を文字に転用する写実主義とその背景にあるイタリアとテロリズムの暴力的な応酬への批判が含まれる。2019/01/31