内容説明
これはブラジル南部にある牧場で奴隷として働いていた黒人少年のお話ですが、この少年には名前がなく、Negrinho(チビちゃん)と呼ばれていました。朝から晩まで働くチビちゃん。ある日チビちゃんは、主人である地主が催した競馬で騎手を務め、レースに負けてしまいます。怒って無理難題を強いる地主。マリアさまの力をかりて地主の命令に従おうとするチビちゃん。ところが地主の息子の意地悪で、チビちゃんは地主の言い付けを守れませんでした。チビちゃんは、罰としてムチで打たれ、とうとう息をひきとりました。チビちゃんの悲しい話は、すぐに人々に伝わりました。それから、地主をはじめ人々のあいだで不思議なできごとがおこりはじめます。チビちゃんが精霊となって皆の前に現れたのです。チビちゃんの魂は今日もブラジルの人々の心の中で生き続け、馬の群れを率いながら人々のため大草原(パンパ)を走り回っているのです。
著者等紹介
ネット,シモエンス・ロペス[ネット,シモエンスロペス][Neto,Simoes Lopes]
作品を高く評価され名を馳せたのがすべて本人の死後、という文学者は世界文学史に数え切れないほど存在するが、シモエンス・ロペス・ネットも、まさにその一人である。1865年リオ・グランデ・ド・スル州ペロタス市生まれ。リオ・デ・ジャネイロ医科大学に入学したものの健康をくずして中退、故郷に戻ってからはペロタス市の税関に職を得た。その後、公証役場を購入したがすぐに手放し、煙草工場を開設するも倒産、次にはガラス工場を購入しながら再び倒産してしまった。晩年は学校の貧しい教師として過ごした。都会で生まれ教育も都会で受けたが、機会あるごとに近隣の農村社会に出て、その社会の人々の風俗習慣及び言語を観察した。1916年に没したが、その作品は没後数十年を経て発見され、高い評価を得、現在ブラジル文学の中でも重要な位置を占めている
イエゲル,クラリーセ[イエゲル,クラリーセ][Jaeger,Clarice]
ブラジル、南リオ・グランデ州出身の版画家。1979年から精力的に芸術活動を展開している。主に木版画の製作に専念し、展覧会での受賞作も多数、個展やグループ展にも意欲的に参加している
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