出版社内容情報
訳詩集
著者=サン=ジョン・ペルス(ぺるす さんじょん)/訳者=有田 忠郎(ありた ただお)
装画=小野 絵里 装幀=亞令
飛翔する鳥は魂そのもの、魂の断裂そのもの、生命の不屈の現れ。
ペルス
宇宙エネルギーの可視的砕片として鳥を描く。
《行け、もっと先へ!……》生きかつ創造することの広大さに向って、われらの夢が出現させるよりさらに多くの岬を巡って、鳥たちは越えて行く/ペルス最後の長篇詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
103
1960年にノーベル文学賞を受賞したフランスの詩人による長編詩。画家ブラックの絵がモチーフになっているが、独立した作品として読める。学術書風の散文的な記述からから詩情が立ち昇ってくるのが素晴らしい。ここで描かれている鳥の飛翔は、詩人の魂の飛翔でもあるのだろう。時間や空間を超えて、天地創造が起こった時点まで詩魂をはばたかせる詩人の力業に、心が震えた。2014/11/09
スミス市松
15
純化された飛翔のイマージュが読者の脳裏を凄まじい速度で駆け抜ける。凝縮され力そのものを体現する言葉によって構築された「超出のベクトル」に乗って、鳥は大空へ飛翔する。空高く飛び、海深く潜る鳥は、滾る血を燃やし、あらゆるものを脱ぎ捨てて、身体は歓びに満ちて太陽そのものになる。誰よりも速く、どこまでも遠くへ。鳥――世界を一巡してもなお羽ばたき続け、存在の全域を目指して行く――は、いまも絶えず出発している。サン=ジョン・ペルス最晩年の長編詩。2015/12/23
きゅー
11
画家のジュルジュ・ブラック生誕八〇周年を記念して、主に石版画の鳥を集めた図録を刊行することとなった。その図録を飾った詩が本書となる。ブラックはキュビズムの始祖の一人と称され、抽象的な絵画を多く残している。鳥についても同様で、一見すると子どもが描いたと思われるほど、ざっくりとして色彩が強い絵が多い。そうした絵とまさに相対する形でペルスは生物学者、或いは解剖学者の目で鳥を描写する。該博な知識が詩情と出会うことで、「鳥」というモチーフは一瞬一瞬姿を変える。鳥は概念であり、具体であり、そして詩でもあった。2018/07/13
保山ひャン
3
ジョルジュ・ブラックの鳥の図録に寄せた長編詩と、1960年のノーベル文学賞受賞記念講演を収めてある。鳥のことを、博物学者は「われらの遊星軌道上にある微小な衛星」と説明した。サン=ジョン・ペルスは、「大空のページに現れた弓であり飛翔する矢」「航海用羅針盤なる不朽の目の奥の、風の薔薇の三十二の区間に、青い鋼鉄の軸心上で震える磁気を帯びた羅針」「分散の星のもとに生まれた生き物」「長いあいだ人の世界の近くにあって、人間との境界線上にある生き物」「魔力を帯びた言葉」「韻律における音節の長短」などと表現する。よくぞ!2016/04/29
ロバーツ
0
フランスの詩人ペルスの長編詩とノーベル賞受賞の講演。2020/10/23