内容説明
第一次世界大戦という危機の中で、戦争について、文学について、知識人について、そして国家について縦横に語ったランドルフ・ボーン。同時代の時代精神を吸収するとともにそれを問い直し続け、権力に対して真実を語るべく誠実な知的営みを続けた彼の仕事は、今日改めて読み直されるべき意義をもつ。アメリカの第一次大戦参戦を支持した知識人たちへの真摯な批判「戦争と知識人」、戦時における国民と国家の一体化を冷徹に問い直す「国家」など15の論文を収め、この特異なアメリカ知識人の思考へと導く論文集。
目次
第一部 第一次世界大戦下の知識人(国民徴兵制の倫理的代替物;戦争と知識人;戦闘の風下で;アメリカの戦略の破綻;戦争日記;戦争における良心と知性;偶像の黄昏;国家)
第二部 文化的ナショナリズムからトランスナショナリズムへ(モーリス・バレスとフランスの若者;我々の文化的謙虚さ;トランスナショナル・アメリカ;ユダヤ人とトランスナショナル・アメリカ)
第三部 自伝的断章(障害者;友情の歓び;文学的ラディカルの歴史)
著者等紹介
ボーン,ランドルフ[ボーン,ランドルフ] [Bourne,Randolph Silliman]
1886‐1918。アメリカの作家・批評家。1886年、ニュージャージー州ブルームフィールドで生まれる。出生時の事故で顔に歪みが生じ、また四歳時に脊髄肺炎のため背中が曲がり、発育も止まってしまうという障害を抱えた。学業優秀だったが、高校卒業後は学費の問題で大学進学ができなかった。数年間、自活の道を探り、二十三歳のときに奨学金を得てコロンビア大学に入学。ジョン・デューイやチャールズ・ビアードらの薫陶を受けつつ、同大学から社会学で修士号を得て卒業。ヨーロッパ諸国の外遊を経て、当時創刊されたばかりのリベラルな週刊誌『ニュー・リパブリック』の寄稿編集者に就任する。1918年12月、32歳で生涯を閉じた。代表作のひとつ「国家」は遺稿として見出された
前川玲子[マエカワレイコ]
立教大学文学部卒業、米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学院(アメリカ研究科)博士課程修了(Ph.D取得)。2017年まで京都大学大学院人間・環境学研究科教授を務め、同年定年退職。京都大学名誉教授。専門はアメリカ思想史。特に1920年代~50年代のニューヨーク知識人、亡命知識人について研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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