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内容説明
死期の近づいた弟のために、棄てたはずの故郷に戻ってきたヘレン。自分の人生から切り離した過去と、とりわけその中心にいる母という存在と向き合う苦しみのなかで、彼女が見出したものとは―
著者等紹介
トビーン,コルム[トビーン,コルム] [T´oib´in,Colm]
アイルランドの作家。1955年、ウェクスフォード州エニスコーシーに生まれる。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを卒業後、ジャーナリストとして活動し、雑誌In DublinやMagillの編集主幹を務める。1990年に小説The Southを発表。以降、数年おきに小説を上梓。作家ヘンリー・ジェイムズを描いた2004年の作品The MasterでIMPACダブリン文学賞を受賞するなど、現代アイルランドを代表する作家と目されている
伊藤範子[イトウノリコ]
1944年生まれ。早稲田大学文学部卒業、名古屋大学大学院博士課程中退。帝塚山大学名誉教授。専攻はアイルランド文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
101
「なぜあなたたちに何も知らされなかったんでしょう。邪魔に入ったり、無駄ないさかいをするより、その事を考えた方がいいんじゃないですか」。苛立ち、否定、絶望、軽蔑、差別…、ネガティブな感情が交錯して、もう読みたくないなと思い始めた頃に、登場人物の頬をはたくように放たれた言葉。いがみ合いの中でも、海というものが凪をもたらしているかのようだった。距離のとり方、理解してほしさ、ほっておいて欲しい時のウザったさ、全て含めて女の身内。余韻が、海が浜に来ては返す音のように遠くでずっと響いている感じ 2024/07/06
ヘラジカ
32
予備知識なし、作者のことも全く知らない、本国での評価など言わずもがな。そういう作品に「名作」という評価を下すことほど勇気のいることはない。しかし、今回は自信を持って断言したい、この作品が必読級の小説であることを。母との確執、過去との対決、病に蝕まれる肉親の壮絶な苦しみ、それを見つめる透徹な視線。「抉り出すような」という表現は、描かれるものに対してだけではなく読んでいる側に対しても当てはまる。後半はまさに読者であるこちらの心が抉られた。恐ろしいほどに冷たいが、それだけに真摯で純粋な小説。(2017・46)2017/07/13
星落秋風五丈原
26
【ガーディアン必読1000冊】エイズになった弟を巡って母、祖母、娘と三代に渡った確執が明らかになる。特に娘ヘレンは父の死に際して母親の取った態度が納得できず、抱えていたものを吐きだしてしまう。比較的男達の方がさばさば。2018/01/10
シュシュ
25
家族の物語。ヘレンは母との関係に苦しんでいたが、母もまた祖母とはうまくいっていた訳ではなかった。ヘレンの弟でエイズになったデクランが離ればなれだった家族を引き合わせた。ヘレンの父があんなに早く亡くならなかったら母と娘の関係もこんなに悪くはならなかったかも。でも希望を持てる結末。読後感がよかった。デクランの友人でゲイであるポールとラリーが、この家族にとってトリックスターのような存在でよかった。 2020/06/27
algon
15
海辺の崖の上に建つ祖母の家にエイズで余命僅かの孫デクランがやってくる。付き添ってきたのは長年不仲のデクランの姉ヘレンと母リリーそしてデクランの友人2人。女性3代は傑物揃いだがそれだけにこじれまくった互いの確執は緩む糸口さえ見せずささくれた感情を抑えたりむき出しにしたりしながらデクランの看病は続く…。娘、孫、それぞれが持つトラウマの深さを徐々に明らかにしながらその苦悩は愛の裏返しと言うか愛そのものと言うか…。看病を縁に絆の再生の可能性を著わしているがかなり個性的な登場人物で緊迫感いっぱいのストーリーだった。2022/03/08
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