内容説明
時間にとり憑かれた男、マクシミリアン・シュテレルは自分の生涯を「時間切断機」ことタイム・マシンの制作にささげる。折しも時は激動の20世紀、戦争や革命がシュテレルと彼の「マシン」に襲いかかる。シュテレルはマシンを完成させ、未来へと説出することができるのか―空前絶後の独創的時間理論。タイムトラベルSF。
著者等紹介
クルジジャノフスキイ,シギズムンド・ドミニコヴィチ[クルジジャノフスキイ,シギズムンドドミニコヴィチ] [Кржижановский,Сигизмунд Доминикович]
1887‐1950。ウクライナのポーランド貴族の家庭に生まれる。キエフ大学法学部に在学中から詩やエッセーを発表。大学卒業後は弁護士助手として働くが、1917年のロシア革命で裁判制度が変わったあおりをうけて失業。以後、音楽院・演劇スタジオなどで講師として文学・演劇・音楽などの歴史と理論を教えて生活の糧を得た。1919年、短篇「ヤコービと“あたかも”」を発表して作家デビュー。活動の舞台をキエフから新首都モスクワへ移し、小説・エッセー・評論のみならず、舞台・映画シナリオ等の多岐のジャンルに渡って創作を展開
秋草俊一郎[アキクサシュンイチロウ]
東京大学大学院人文社会系研究科修了。専攻は比較文学、ロシア文学など。現在、ハーヴァード大学客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KI
21
点と点を繋いで、線の上を行ったり来たり。2018/09/04
へくとぱすかる
21
哲学的な文章。比喩や暗喩に満ちた。迷路に迷い込むような文学として一種の魔力さえ感じられる。1929年当時はウェルズの『タイムマシン』のオマージュ作品はほとんど存在しなかっただろう。時間の正体をめぐる議論は難解だが、ここまで徹底的に考察するような作品は珍しいだろう。いわゆるタイム・パラドックスを扱っていないことは、時間テーマの小説としては、早期のものであることを明かしている。文学史からこぼれ落ちていた貴重な一編だろう。2014/01/07
かわうそ
16
1920年代に書かれたSF小説であるにも関わらず、哲学的ともいえる考察に基づいた独自の時間理論は今読んでも全く古さを感じさせない。正直理解できていない部分も多いけど、その後の展開が気になって仕方ないオチも含め非常に楽しかった。2013/11/27
きゅー
11
時間の謎に心を奪われたシュテレルによるタイムマシン製作の物語。クルジジャノフスキイが書く物語は「いま、ここ」からの逃走に満ちているが、本作はその傾向が特に強い。シュテレルはついにタイムマシンを完成させるが、彼の見た未来が”本当の未来”とは違うのではないかとの疑念に襲われる。「いま、ここ」は常に彼と共にあり、つまり現実から逃げることはできない。シュテレルが一瞬だが得て、すぐに喪った未来をどこに見つけようと言うのか、クルジジャノフスキイはそれを語ろうとしない。2016/03/23
スターライト
9
クルジジャノフスキイを読むのは2冊目。ロシア革命を経験した著者の作品に、苦い社会風刺がにじむのは不思議ではない。本書は幼い頃に時間に興味を持った主人公マクシミリアン・シュテレルのエピソードから説き起こし、やがてタイムマシンを発明し、未来へと向かう姿を描く。科学的であると同時に哲学的な筆致も交えるところは、さすが。ラスト3行の登場人物の会話も、読者に深い余韻を残す。「引き出しのなか」から、さらに彼の作品が紹介されることを望む。2014/03/08
-
- 和書
- 佐藤泰志そこに彼はいた