内容説明
ジャングルに生まれた英雄マクナイーマの物語・インディオに伝わるおとぎ話の数々を組み合わせて作られた、ブラジル文学の極点。
著者等紹介
ヂ・アンドラーヂ,マリオ[ジアンドラージ,マリオ] [de Andrade,M´ario]
1893年10月9日、サンパウロに生まれる。ブラジル芸術を一新した“近代主義”の立役者のひとり。1945年死去
福嶋伸洋[フクシマノブヒロ]
1978年生まれ。東京大学文学部西洋近代語・近代文学科卒業、東京外国語大学大学院博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。現在、共立女子大学文芸学部専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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(C17H26O4)
78
ブラジルの英雄すごいぞ。なんでもありだぞ。マジックレアリズム的な訳わからん無尽蔵のエネルギーを感じるね。この力があったらもう無敵じゃんねえと思うけど、強すぎるのに弱すぎる。しょっちゅう何かから逃げている。都合良く何にでもなれて、いつだって女の子とじゃれあいたくて、じゃれあっちゃって、破廉恥なのに言葉遣いは美化語。なんだかすごく大らかだ。ストーリーがもうちょっとあったら尚楽しめそう。合言葉(?)はね、英雄なのにさ「あぁ!めんどくさ!」笑 別の訳者のもあるけれど、この福嶋さん訳のがより面白いと薦めてもらった。2021/06/29
らぱん
45
飛ばされた。マジックリアリスムの源流で、ブラジルモデニズモ(近代主義)の産んだ英雄マクナイーマの物語。神話的冒険譚で、大まかなストーリーはあるが無数の民話の集合体のようなもので素晴らしく出鱈目で整合性はおよそ無い。あっさり死んだり、死んだようだが生きていたりする。主人公は「性格を持たないという性格」ということだが、好色で陽気で無鉄砲、考えなしの出たとこ任せで、失敗から学ぶこともなく、飄々と旅をする。憎めない男で好感は持てるが、近代が影を落とし重さを持たせているように思う。底抜け感は薄い。↓2019/12/23
スミス市松
21
アストゥリアス『グアテマラ伝説集』にも比肩する極彩色のマテリアルを散りばめた驚異的な語りに目が眩むが、同時にブラジル・モデルニスモ文学の特徴を確かに感じさせる小説。その語りはアマゾン川流域インディオの諸言語から抽出された単語や世界各地の民話の形態素を自由に組み替え交配させ(プロップ『昔話の形態学』は本書と同年に刊行)、主人公マクナイーマの好色かつ怠惰かつ利己的でありながらときに寛大でときに冷酷でもあるつかみどころのない=特性のない性格はあらゆる「本当らしさ」から逸脱したまさに「混血の美学」の結実といえる。2020/12/03
Bo-he-mian
17
本書は映画版(同題:'69年)を先に観て、そのシュールでぶっ飛んだ内容に夢中になったのだが、ほぼ同じ時期に原作が邦訳され、これまた狂喜乱舞。マルケス、リョサ、アストゥリアスといった南米のマジック・リアリスム文学の先駆的作品がこの『マクナイーマ』。洗練された文学性の高い作品と比べると、粗削りで生々しい…先住民の神話や民間伝承のような、ゴツゴツの原石に触れているような感じの物語である。キリスト教的な道徳観念とはかけ離れた、純粋で本能的で享楽的で、残酷で猥雑でとてつもなく陽気で破天荒な英雄マクナイーマの冒険譚。2019/05/03
Porco
16
ブラジルの小説。1928年発表の古典的な作品のようです。アマゾンの諸民族の民話などを織り交ぜているそうで、合理的な発想からすれば荒唐無稽、あるいは理解が難しいものでした。主人公は「英雄」マクナイーマなのですが、なかなかどうしようもないやつだったり。2024/01/12