内容説明
生はどのように営まれるべきかという人間の根底的な疑問を、曖昧なままでおくことなく、クライストはその生涯を通して愚直に徹底して問い続けた。『O侯爵夫人』は、家父長的な枠組のなかにある家庭的な幸福に対して、クライストが反逆の心をうちに含んで抱いていた屈折した深い愛着を如実に物語る作品である。クライストは、生きている間、飽くことのない完全主義をもって他者との一体感をもとめ続けた。クライストの文学には、愛と呼ばれるものへの渇望が充溢している。クライスト自身が一種の孤児であるという視点に立つ時、自身のついに満たされることのなかった家庭の幸福への夢想を『O侯爵夫人』という小説として、孤独のなかで紡いでいたこの作家が、F伯爵に自分を投影していた姿が見えてくる。
目次
超越と身体―『ペンテジレーア』『アンフィトリオーン』
家族(『拾い子』;『O侯爵夫人』)
共同体―『ミヒャエル・コールハース』
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