感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
121
タイトルの『特性』云々は読み進めば分かるかと思ったが、半ばまで来て作者がそのことを忘れてしまっているように思える。第1巻では面白そうな考えに思えた平行運動や精神的病気と犯罪のことも、たまに出てくるがそれは本題ではないようだ。最初は立派にみえたアンルハイムがいかにもユダヤ人的的描かれ方になるし、ボーナデーアなどもはや色情を抑えるのに必死なのか何なのか。彼女の生きる目的は? で、ウルリヒは節操のない男って事で良いのではないか?もしくは使命感のない男か…。先を読むのがつらい。2017/05/08
syaori
53
本巻でウルリヒの幼友達ヴァルターについて少し理解できたように思います。彼はウルリヒのように、自分の認識を「押し付け」る個人や社会の「堅固な制度」から独立した精神たろうとして、しかし大きな枠組みの中で安んじることを選んだ人物だったのでした。本巻ではウルリヒも「多数の側に与」するか決断する必要を感じます。彼は孤独を選び、そのために、専門化と分業が進み世俗的な厳密さと合理的思考を求める中で現代人が「忘れてしまった」人間の「非合理で計算できない」部分の研究をすると言いますが、それはどんなものなのでしょう。次巻へ。2020/08/04
NAO
51
ドイツと近しくなりたかったら、ドイツと対抗した姿勢を取って見せることだ。平行運動の中心人物ラインスドルフ伯爵の取った行動は、国内に大きな反発を引き起こし、ついにデモまで起きる始末。こういった状況は、オーストリア・ハンガリー帝国という広大な領土を持ちながらもドイツの強い影響下にあった戦前のオーストリアの状況を皮肉ったものか。デモで市内が騒然とする中、ウルリヒは、父死亡の電報を受け取り、故郷に戻ると、ウルリヒの前に突如現れた「忘れられていた妹」が突如現れ優柔不断なウルリヒを振り回すというあまりにも強引な展開。2016/07/18
かんやん
25
「おれは変わる。おれと関係のあるものも同様に変わる」第三部『千篇一律の世』から第四部『千年王国へ(犯罪者たち)』へ。父が亡くなり、故郷へ帰ったウルリヒを待っていたのは、忘れていた妹アガーテだった。猶予期間の待機状態にあった彼は、妹との対話に導かれて、遂に道を見出す。「ぼくは、聖なる生活の道を、研究している」何度も仄めかされていた聖者たちの神秘体験が正面から取り上げられる。これは全く常軌を逸したことで、途方に暮れる。溜息がもれる。尋常ではないから、笑いももれる。敬して遠ざかるか、肩をすくめて立ち去るか?2019/03/22
atomos
15
「特性のない男」ことウルリヒくんは安定のクズっぷり。平行運動はぐだぐだになり、人間関係がギスギスしきったところで、第三部、アガーテちゃん(ウルリヒ妹)がついに降臨です!それにしても〈忘れていた妹〉って、ムージルさん、ちょっと強引過ぎやしませんか。ウルリヒ&アガーテ兄妹のやり取りは、Wボケ漫才かってぐらい面白い。この小説、面倒臭い議論が多くて辟易するけど、ムージルさんの屈折したユーモアセンスは堪らなく好きだなあ。2014/09/25