出版社内容情報
1966年に静岡県清水市で発生した、強盗殺人放火事件。袴田巌さんは逮捕され、一貫して無罪を主張したが、1980年に最高裁で死刑が確定した。2014年に静岡地裁が再審開始を決定、死刑及び拘置の執行停止を命じ、48年ぶりに釈放された。しかし、2018年6月11日に東京高裁は再審開始を認めず、再審請求を棄却した。弁護側は今後、最高裁に特別抗告をする見込みだ。
静岡地裁への再審請求審の過程で、違法取調べ、自白強要、証拠偽造など幾多のおかしな点があぶり出された。再審請求審の全体を振り返りながら捜査や裁判の問題点を説き起こし、死刑冤罪が現代の司法に突き付ける教訓を考える。
第1部 覆された再審開始決定──本当に「死刑が妥当」なのか
第2部 画期的な地裁の決定、そして曲折
第3部 即時抗告審で浮き彫りになった「おかしな点」
第4部 DNA鑑定をめぐる攻防
第5部 支える─袴田巖さんへの共感の輪
袴田事件の主な経過一覧
第1部 覆された再審開始決定──本当に「死刑が妥当」なのか
1 悪意に満ちた決定
2 弁護側主張をことごとく否定
3 最高裁へ特別抗告
4 弁護団長・西嶋勝彦弁護士インタビュー(2018年6月28日)
第2部 画期的な地裁の決定、そして曲折
1 再審開始か、地裁審理がいよいよ大詰め(2013年12月25日)
2 最高の決定が出た、そして、これからのこと(2014年4月2日)
3 再審開始決定の大きな特徴
4 肉眼で判定可能な色の違いに着目、再審をもたらした市民による味噌漬け実験(2014年6月20日)
5 改めて、再審開始決定を受けてなすべきこと(2014年4月16日)
6 48年ぶり釈放の袴田さん、再び死刑囚として収監の恐れも(2016年3月10日)
7 弁護団「ただちに再審を」、検察は開始決定の取消求める(2018年2月2日)
第3部 即時抗告審で浮き彫りになった「おかしな点」
1 やはり違法捜査のオンパレードだった(2016年12月28日)
2 1・4トンもの味噌を仕込んでまで死刑を維持しようとする検察(2016年11月16日)
3 「証拠隠し」か「証拠漁り」か‾証拠リスト開示をめぐるせめぎ合い(2016年9月21日)
4 「5点の衣類」の捜査に当たった91歳の元警察官らの証人尋問を(2016年7月13日)
5 脛の傷はいつ付いたのか‾新たな「捏造」疑惑が浮上(2016年5月25日)
6 警察が接見の盗聴までしていた(2015年4月22日)
7 検察の「二枚舌」主張が発覚‾有罪にするためなら「何でもあり」なのか(2014年10月29日)
8 ないはずのネガフィルムが突然出てきた‾新たな「証拠隠し」疑惑(2014年8月20日)
9 「焼けたお札」も捏造証拠か‾「自白」の誘導が明らかに
第4部 DNA鑑定をめぐる攻防
1 身柄拘束45年にして「再審・無罪」の可能性が仄見えてきた(2011年7月6日)
2 検出されなかった被害者のDNA型(2011年12月28日)
3 袴田さんとも一致しなかった血痕のDNA型‾再審開始へ決定的な鑑定結果(2012年4月18日)
4 鑑定人尋問で地裁審理は大きなヤマ場に(2012年11月7日)
5 DNA鑑定をめぐって続く綱引き(2015年2月18日)
6 東京高裁、検証実験の実施へ傾く(2015年4月22日)
7 審理を「迷走」させる裁判所(2015年7月22日)
8 検察提案に則って裁判所が強行する検証実験(2015年10月21日)
9 とうとう強行された検証実験(2016年1月27日)
10 DNA鑑定結果「揺るがず」と弁護団‾検証実験の最終報告書提出
11 「検証実験に力なし」‾DNA鑑定で尋問(2017年10月13日)
第5部 支える─袴田巖さんへの共感の輪
1 「無罪を主張した」/元裁判官の告白
熊本典道さんインタビュー(2007年2月25日、福岡市東区にて)
2 ボクシング界と袴田事件
3 国会議員連盟の動き
4 新たな人生へ、姉との二人三脚/映画『袴田巖 夢の間の世の中』が完成(2016年2月26日)
5 姉の秀子さんが伝える思い
6 袴田さんの変化を実感する「誕生会」
袴田事件の主な経過一覧
おわりに
小石 勝朗[コイシ カツロウ]
著・文・その他
内容説明
耐え難いほど正義に反する、再審開始取消し東京高裁決定。東京高裁はなぜ誤ったのか。5点の衣類、DNA鑑定、自白など証拠の評価をあらためて検証する。
目次
第1部 覆された再審開始決定―本当に「死刑が妥当」なのか(悪意に満ちた決定;弁護側主張をことごとく否定 ほか)
第2部 画期的な地裁の決定、そして曲折(再審開始か、地裁審理がいよいよ大詰め;最高の決定が出た、そして、これからのこと ほか)
第3部 即時抗告審で浮き彫りになった「おかしな点」(やはり違法捜査のオンパレードだった;1.4トンもの味噌を仕込んでまで死刑を維持しようとする検察 ほか)
第4部 DNA鑑定をめぐる攻防(身柄拘束45年にして「再審・無罪」の可能性が仄見えてきた;検出されなかった被害者のDNA型 ほか)
第5部 支える―袴田巖さんへの共感の輪(「無罪を主張した」/元裁判官の告白―熊本典道さんインタビュー(2007年2月25日、福岡市東区にて)
ボクシング界と袴田事件 ほか)
著者等紹介
小石勝朗[コイシカツロウ]
朝日新聞などの記者として24年間、各地で勤務した後、2011年からフリーライター。冤罪、憲法、原発・地域発電、子育て支援などの社会問題を中心に幅広く取材し、雑誌やウェブに執筆している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。