出版社内容情報
神戸酒鬼薔薇事件では、ほとんどの人がA少年を「犯人」と信じて疑わない。少年審判に現われた「証拠」をひとつひとつ掘り起こし、神戸酒鬼薔薇事件に新たな視点を提供する。
【目次】
はじめに………何が問題か
序 章…………事件発生から自白まで
第一章…………偽計自白と告発
第二章…………「検事調書」と立花論文批判
第三章…………常識を疑え――酒鬼薔薇事件と報道
第四章…………警察・検察をなぜ告発したか
第五章…………真実と道理を社会的力に
第六章…………検事総長に要請する
第七章…………不起訴処分と付審判請求
第八章…………精神鑑定書は鑑定に値するか
第九章…………旧弁護団との交渉――弁護士にとって正義とは何か
【資料】
1,神戸家裁決定要旨
2,神戸新聞社に送られた犯行声明文
3,懲役13年
はじめに
――何が問題か
神戸酒鬼薔薇事件の「犯人」とされるA少年が医療少年院を仮退院したと、マスコミが大々的に報道した。更に最近では、「酒鬼薔薇は治っていない!『再犯の恐れなし』との判断は時期尚早だった、性的サディズムは完治したわけではなかった」、とのセンセイショナルな報道がなされている。犯行の凶悪・異常、社会に与えた衝撃、被害者の遺族の悲しみの深さ、そして犯人がA少年に間違いないとすれば、このような報道もおかしくないだろう。
問題はその前提と内容である。A少年は本当に「犯人」か。A少年を「犯人」とする合理的根拠があるか。
真実は証拠によって決まるのであって、多数決によって決まるのではない。警察も、検察も、裁判官も、弁護(付添人)団も、マスコミも、世論も、こぞって、A少年が「犯人」だといっても、それを裏付ける合理的な証拠がなければ、犯人ではない者は「犯人」でない、と、あたりまえのことをあたりまえにいわなければならない。
A少年を「犯人」と信じて疑わない人々に、「どんな証拠があるのですか」ときいたらどう答えるだろう。「本人の自白がある」と答えるだろう。しか「直観像素質者」とした精神鑑定は、A少年を「犯人」と前提した説明であって、学問的方法による犯人解明の結論ではない。精神鑑定人は、シロかクロか白紙の状態で鑑定を求められたのでなく、クロの状態での鑑定を求められたのである。しかもA少年が取調べの段階で騙されて自白した事実を告知されず、A少年がそれによって重大な精神的打撃を受けたという重大な事実を不問にして鑑定しているのである。これでは正しい精神鑑定ができるわけがない。
A少年の作成とされる真犯人作成の「挑戦状」(巻末資料2)や「懲役十三年」(巻末資料3)という文書は、文章そのものの知的レベルという一点だけで、A少年の「犯行」を証明するどころか、無実を証明するものである。
結局、A少年を「犯人」と認める合理的証拠は何もない。人々は、証拠によってではなく、A少年が自白したということ、逮捕されたということ、審判で有罪を前提とする決定が出されたということ、これに対して弁護団が抗告しなかったということ、マスコミがこぞってA少年を「犯人」と報道していることによって、A少年を「犯人」と信じて疑わないのである。事件に対する懐疑的精神ではなくて人間に対する猜疑心、権力と権威
内容説明
警察も、検察も、裁判官も、弁護団も、マスコミも、世論も、A少年を「犯人」だとする。しかし、A少年を「犯人」だとする証拠はあるのか。事件にこだわり続ける野人弁護士が、疑問を投げかける。
目次
序章 事件発生から自白まで
第1章 偽計自白と告発
第2章 「検事調書」と立花論文批判
第3章 常識を疑え―神戸酒鬼薔薇事件と報道
第4章 警察・検察をなぜ告発したか
第5章 真実と道理を社会的な力に
第6章 検事総長に要請する
第7章 不起訴処分と付審判請求
第8章 精神鑑定書は鑑定に値するか
第9章 旧弁護団との交渉―弁護士にとって正義とは何か
著者等紹介
後藤昌次郎[ゴトウショウジロウ]
1924年、岩手県北上市に生まれる。黒沢尻小・中学校、一高文科・同理科、東大法学部を経て1954年弁護士となる。関わった主な冤罪弾圧事件:松川事件、八海事件、青梅事件、日石・土田邸事件、総監公舎爆破未遂事件、日大闘争警官傷害致死事件等。1992年東京弁護士会人権賞受賞
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