内容説明
黙って去っていった恋人の幸せに、思い出のカクテルで祝杯をあげる気弱な男。これでよかったのさ…。ほのかな酔いが、精一杯強がる男を、ちょっぴり切ない気分にさせる。表題作「テキーラの朝やけ」をはじめ、バー・ボロンゴにやって来る男と女の恋模様を綴った14編。酒の味はいつも変わらず、飲む人の心だけが恋わってゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
greenish 🌿
43
(再読)ほのかな酔いが、精一杯強がる男をちょっぴり切ない気分にさせる。バー・ボロンゴにやって来る男と女の恋模様を綴った14のショートストーリー ---蔵書整理して見つけた15年程前に読んだ本。マスターバーテンダー大介が、店に訪れる屈託を抱える男女を、旨い酒と優しさと少しのユーモアで解きほぐしていきます。 《テキーラサンライズ》志半ばで夢を諦めた男がかつての自分と決別し、そして自分を追い越していった大切な女性の未来を願って飲む、朝焼け色したカクテル・・・。陽はまた昇るですね。2014/02/03
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
40
東京・渋谷の外れにあるバー・ボロンゴを舞台に夜の物語が綴られます。小さなグラスの中の酒は、異国の海の夜明けのようにも、訪れを待つ季節を切り取ったようにも映るのです。一杯のマルガリータを飲む姿を手がかりに、都会の夜を泳ぐ男を探す女性。かつて夢を託したテキーラサンライズを飲みながら、その夢に別れを告げる髪を切ったミュージシャン。年の離れた恋人の幸せのため、一世一代の芝居をする男を慰めるのはマンハッタン。疲れた夫婦が【あの日】に帰るため、もう一度飲むダイキリ。ゆっくりと飲み干せばまた、朝が来る。14編の短篇集。2014/07/01
hirune
36
渋谷のバーのオーナーでバーテンダーの大介さんはカクテルやお酒に絡めて、お客さん達の人間模様に力を貸したり力及ばず心を痛めたり。男女の話し、家族の話し、諍いやトラブル、ギャンブルやどうしても抜けられない宿業に囚われた人々を、でもそんなに重くなくサラリと描いている感じです。いろんなカクテルの説明が面白い☆大介さんの作るカクテルの数々を見てみたい、そしてちょっぴり舐めてみたい(お酒弱いからね)2015/10/29
セウテス
36
〔再読〕オキシロー氏の、Barで起こる男と女の物語を、カクテルを通じて赴きのある書きくちで綴る作品です。軽いハードボイルドの、雰囲気を楽しめます。あるあるではないですが、似たような経験を読者の皆さんも感じて、思い出に浸れるのではないでしょうか?Barやカクテルの知識も楽しめ、役に立ち、ミステリーとお酒は切っても切れないモノだと、再確認しました。基本的にバーテンと男と女の三人しか登場しない短編で、しっかりミステリーしている事に驚きます。あ~是非とも、お酒の呑める時に読まれる事を、お薦めいたします。2014/06/25
greenish 🌿
27
(再々読)酒の味はいつも変わらず、グラスを持つ人の心だけが移りゆく…。バー・ボロンゴを舞台にした14の物語 ---今作はハードボイルド・テイストのショートストーリー。バーとは不思議な場所で、我が家ではないのにふと心のたがを緩めてしまう、そんな場所。ゆえにバーテンは、男と女の道先案内人にもなるようで…。 かのヘミングウェイも愛した”ダイキリ”を仲立ちとして夫婦になった2人。やがて倦怠の時を迎えるも、バーテンより差し出された”ダイキリ”が、2人に蜜月の記憶を呼び覚ます。酒とバーテン、求めればそこに在る…。 ⇒2017/06/21