内容説明
欧米の人権思想の圧力にもかかわらず、死刑存続の立場に立つ東アジア諸国。その底にある社会意識とは何か?日・中・欧の歴史家・法律家・社会学・人類学者が、究極の刑罰を考究することで、東アジア世界の法習慣、法思想、法と宗教、制度の根源に迫った国際共同研究。
目次
1 罪と刑罰(究極の肉刑から生命刑へ―漢~唐死刑考;宋代以降の死刑の諸相と法文化;千金の子は市に死せず―17・18世紀朝鮮時代における死刑と梟首)
2 社会と死刑(魏晋時代の皇帝権力と死刑―西晋末における誅殺を例として;朝鮮党争史における官人の処分―賜死とその社会的インパクト;中国の前近代絵入り史話における死刑と暴力の図像 ほか)
3 非中国的視座に立って(古代インドにおける死刑―サンスクリット文献に見える刑罰の分析を通じて;ムルキ・アイン(Muluki Ain)―ネパールの法典と死刑
死刑と朝鮮の法的伝統)
著者等紹介
冨谷至[トミヤイタル]
京都大学人文科学研究所教授。中国法制史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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huchang
1
風呂で読んでいて、刑の種類を脳内ビジュアルで補完した挙句、貧血起こして倒れそうになったことがある本。スプラッタな描写があるわけじゃないのですが、上記の癖がある人は気を付けた方がいい。律令ができたはるか昔の頃から今に至るまで、他者が受けている痛みを想像することは、人間にとって至難の業やったのかもしれへんなぁ。現代中国の死刑制度に関する論文は、あの国で仕事や勉強する予定のある人は読んどくといいかも。処罰感情がどうなってんのかは、けっこう日常生活に影響する。知ったうえでしか同じ人間やん?を言えん気がした。2020/06/10
抹茶ケーキ
0
史学から見た東アジアの死刑。漢代からの中国の死刑の変遷、古代インドの死刑、韓国、ネパールの話など、非常に広い範囲にわたって死刑が論じられている。各論文が対象としている素材は雑然としているけど、最初と最後にまとめがあってすごく読みやすい。個人的には、結局のところ、死刑は権力・主権との関連によって決まってくるっていうテーマが面白いと感じた。2016/12/13