内容説明
イソクラテスは前4世紀のポリス間覇権争奪の時代にギリシア統一を訴えた大弁論家。本書には、現実の事件をモデルに架空の裁判を想定して自己を語った最高傑作『アンティドシス』、97歳の高齢で完成させた『パンアテナイア祭演説』、演示的弁論の模範を提示した『ヘレネ頌』『ブシリス』、また弁論代作時代の法廷弁論など13篇に加え、絶筆となった『書簡三』(ピリッポス宛)ほか9通の書簡を収載する。
著者等紹介
イソクラテス[イソクラテス][Isocrate]
前4世紀のポリス間覇権争奪の時代にギリシア統一を訴えた大弁論家
小池澄夫[コイケスミオ]
滋賀大学教育学部教授。1949年長野県生まれ。1979年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。1984年滋賀大学教育学部講師を経て現職
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感想・レビュー
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roughfractus02
5
著者が弁論の「教育」を推し進めるのは、人々が自らの「素質」を脱すれば運命から解放されると考えたからだという。ここにプラトンと同時代の著者の衆愚政治に対する態度が窺える。彼の師ゴルギアスが弁論を情緒に訴えるものと捉えたのに対し、著者は理性に訴えるものとし、情緒に流される相手の方向を理性へ向け直すことを目指した。一方、プラトンの厳密な知よりも実践的な知を重視する著者は、理性を、偶然(好機;καιρός)に導き「ドクサ」を健全な判断へと変える働きと捉え、活動しつつ思慮を養う「教養」なる試行錯誤の過程を強調する。2019/08/02
有沢翔治@文芸同人誌配布中
4
衆愚政治をどう改革していくか。プラトンは民主政に見切りをつけ、エリート主義を主張したのに対し、イソクラテスは民衆の啓蒙で打開したがっているように感じた。 http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51519680.html2021/07/17