内容説明
本書は、出版の自立つまり販売を目的とした虚構作品は、いつ、誰れによって開始されたか。近世小説史上の営為と様式について、仮名草子・浮世草子・読本・滑稽本・洒落本・人情本などの展開の中にそれを探り、注目すべき諸問題を論じるものである。
目次
草子屋仮説
刊行のための虚構の発生(謡曲を題材とした仮名草子について;本朝女鑑の虚構)
西鶴流の文体について(その創成と頽唐)
仮作軍記の方法
近世に於ける曾我物語の軍談について
『呉服文織時代三国志』について
小冊子の板行に関する場所的考察―洒落本の場合
滑稽本としての劇書
近世小説の水滸伝受容私見(「板東忠義伝」と「絵本更科草紙」;「通俗忠義水滸伝」の訳者と「渚の藻屑」;「新編水滸画伝」と馬琴の金聖歎批判)
馬琴をめぐる書肆・作者・読者の問題
『覊旅漫録』の旅に於ける狂歌壇的背景について
近世における小説評論と馬琴の「半〓窓談」
『南総里見八犬伝』私見(八犬伝の構想に於ける対管領戦の意義;「吾仏乃記」の世界と「南総里見八犬伝」)