内容説明
戦争と平和のはざまの中に放置された残留孤児をクローズアップして、これまで目隠しされていた戦争の暗黒の側面を鋭く摘発しながら、孤児を生み出した歴史的背景を丹念に追い、“日本人”としての40年余の空白をどのように埋めるのがよいか、を問う。
目次
1 母よ、父よ、わが祖国よ
2 満州の悲劇―玉井秀夫さんの体験
3 歴史は消せない
4 36年ぶりに帰って―栗原貞子さんの体験
5 帰国への道程
6 祖国に生きる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みなみ
3
戦後の日本政府は、徹底して自国民に対する戦後補償を無視し続けている。中国大陸に残された人たちに対してもだし、帰国した開拓団に対してもだ。とんでもなく冷たい。まるで、戦争世代が死んでいくのを待っているようだとさえ思う。たよりは民間の善意。いまでも政府は子ども食堂を称賛して国としてはなにもやらないから、体質はまったく変わっていない。そして自国民すら無視するのだから、ましてや侵略していった相手国(中国、朝鮮半島)の戦後の戦争責任や補償に、誠意を持つはずもない…2019/01/16
HA
1
大東亜戦争の敗戦により大陸に取り残された「中国残留孤児」がテーマの本書。80年代半ばに書かれた事もあり、現在進行形で彼らを取り巻く厳しい状況が伝わってくる。親を殺され、さらわれ、あるいは売られ、もらわれ・・・祖国に帰れば、いじめ、政府の支援は最低限。国民を見捨てる体質は今も昔も変わらないのだろう。戦争に負けるとはありとあらゆる価値観と拠って立つ場所が怒涛のように崩壊し、決して消えない傷を付けるものだ。それでも生きて、祖国の地を踏めた。その経緯と結果に対しては素直に中国の人々に感謝すべきだと思う。。2015/01/13