内容説明
“リアリズム絵画”という生き方を選んだ孤高の画家が、その実践と哲学を綴ったこれまでにない本格的指南書。
目次
なぜいまリアリズム絵画を描くのか
第1部 制作(絵画は写真とどう違うのか;制作入門篇―デッサンとは何か;制作心構え篇―視ること・考えること;本制作篇―油彩画で人間を描く;空間を描く―フェルメールの「牛乳を注ぐ女」)
第2部 思索(リアリズム絵画の歴史と思想;終わりなき創造 レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」;死すべき命を見つめる;存在の神聖を視るために)
著者等紹介
野田弘志[ノダヒロシ]
1936年、韓国全羅南道生まれ(本籍は広島県)。57年、東京藝術大学美術学部油画科に入学。62年、白日会会員(~98年)。70年、初個展(銀座・三越)。91年、安田火災東郷青児美術館大賞を受賞。94年、宮本三郎記念賞を受賞。95年、広島市立大学芸術学部教授就任(~2005年)。06年、北海道伊達市に絵画教室「野田・永山塾」開講(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Happy Like a Honeybee
9
技術は開発するもので、習うことはできないのです。遠近法を工夫することで、対象は実体化する。フェルメールの項は必見だ。絵画入門ではあるが、意外と哲学書に近い。絵画は終わりがなく、自分の世界を極めていく孤独な作業であるし。日本の美術家が、世界で通用しないヒントが隠されている2016/08/12
大竹 粋
7
84歳の筆者がようやく純粋に己の芸術と向き合う環境を作ることができた、という。デジタル、バーチャルの対極にあるリアリズム絵画には、何か見落としている大きく大切なものが含まれていると感じる。 対象を見続け描ききる行為からしか得られない本質的な感覚があるのだと思える。禅やジャズと同じくやらないと得られない感覚的な本質。そこに共通点を感じる。2022/08/21
oz
5
初読。本書は技法書に留めておけば良い個別・体感的な知識を絵画芸術一般に敷衍してしまった点で論外である。リアリズム=美術の究極目的であるというロジックは詐術である。カメラと肉眼での観察の差異を単純に単眼と両眼で捉えて、事物の実在(この定義も曖昧だ)への接近に差が出るという謂いは、片眼、色弱、眼球に外傷を負った人間に美術の本質は理解出来ぬということだ。引用される文献も我田引水の極み(この論脈でフーコーやパノフスキーなど避けて通れぬはずである)。作者が想定した「志ある若い画家」諸賢は本書を避けて通った方が良い。2012/11/19
K.iz
3
帯に『「リアリズム絵画」という生き方を選んだ孤高の画家が、その実践と哲学を綴ったこれまでにない本格的指南書』と書いてある通りでした。前半は写実絵画の作成方法を講義形式で解説し、後半は写実絵画の意義を西洋絵画の歴史や日本の美意識の特徴も踏まえつつ丁寧に説明されています。後進に伝える意志に溢れて内容の重い本でした。自分の絵を自身で解説するという禁じ手の本も出していただきたくなりました。2010/08/16
Tenouji
2
著者の主張が強烈に出ているが、それについては最後の章にコメントがある。リアリズム絵画の話よりも、対象の存在に対してどう向き合うかというアーティストの姿勢に心打たれる。本質をつかむ瞬間を求めて…そういう意味では、スポーツも同じようなところがあると思う。2014/02/20