内容説明
メルモットは栄華を極める。田舎に広大な地所を購入し、中国皇帝を大晩餐会でもてなし、保守党から国会議員として当選する。一度に莫大な出費だ。この出費のどれか一つでも控えていたら、破滅を免れていただろう。しかし、ある噂のせいで、メキシコ鉄道の株価が暴落する。彼は苦し紛れに隠し資産に頼ろうとするが…。トロロープ後期の傑作!本邦初訳完結!稀代の詐欺師が突き当たった悲劇的状況!大金融詐欺の結末は?
著者等紹介
木下義貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)。北九州市立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
48
この物語の登場人物のほとんどが、メルモットほどではないにしても利己的で倫理感が欠如している。中でも、上流階級ではメルモット家との交際を恥だと考えられているのを承知で息子とマリーとの結婚を後押しするフィーリックスの母親や、夏の社交界シーズンにどうしてもロンドンにいたいとメルモット家に滞在するロングクロウ家の次女の身勝手ぶりは際だっている。作者は旧式な人間でこういうタイプの人間には批判的だが、旧式一辺倒でももはや暮らしてはいけないとも思っている。そんな大転換期にどう生きるかに、その人の人間性が表われてくる。2025/10/03
takeakisky
0
気がつけば、100章。1200ページもあっという間の出来事だった。タイトルは、今の生き方だが、ヴィクトリア朝らしい堅苦しい道徳観や度を超した上品さから徹底的に逸脱する人物、行動は出てこない。安心の現実的なはみ出し者たち。悪党たちも古風でありながら、現代的ですらある。終章に向けて、どんどんストーリーが収斂していくが、落ち着くべきところに落ち着き、納得感は高い。すこぶるリーダビリティも高く本当にぺろっと読んでしまう。訳者のお国言葉も慣れると愉しい。深く考えるタイプの本ではないが、とても満足して本を閉じる。2024/07/19
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