内容説明
波瀾万丈の歴史・時代小説楽しさと感動の26編。ダイナミックな人間の営みである歴史のひと齣に、冷徹な作家の眼と鋭利な筆致で迫り、魅力あふれる充実の作品として提供する、他の追従を許さない自信の年度版アンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tanaka9999
9
1995(平成7)年発行、光風社出版の単行本。26編。陳舜臣『錦瑟と春燕』中国の小説を翻案したもの。紹介色が強いパターンの1作。面白いものを選んでいるので、面白いのだが、どうしても解説の分量が多くなってしまうのは仕方がないか。藤沢周平『静かな木』半沢直樹的な復讐話。しかし、主人公は婿のことがなかったら動かなかったつもりか。まぁ、そこが藤沢作品らしいですが。宮城谷昌光『長城のかげ』既読。しかし、作者がほぼ出てこないこともあり、主人公の心情にすっと入っていける。2023/03/26
山内正
5
行国は前にある刀箱、これを家に置いておけと多江に言付ける 越後から出て二十五年名刀を作ると江戸へ昨年これぞと刀を打ち 昴の銘を入れた 深夜でも早朝でも遠慮のう帰られませ あのじゃじゃ馬の若い娘がいてくれたら 私の守り刀を作って下さい 何時までも私を忘れないでと それなら庵主さまかねと 昔そんな事があったとは 庵主は江戸から帰った忠之進とは 姉様の事です今は五人の子が2021/11/05
山内正
5
今の今まで咲いていた椿がぽったりと 裏から帰った兄嫁が驚く 兄が手招きし藩が揉めて江戸家老が 追放 支持してた義父が何れ沙汰が 置いてきた息子が気掛かりになる 婚家で苦労するお前を父も儂も気に掛けるのがお万津は気に食わんのだ 私義父様の気持ち誤解してたのかも 息子が死んで頼りにしてたのかも 息子が病気他知らせに婚家に戻った 何故ここに来た出て行けといった筈 仕方ありません お待ち下さいと息子がほらと奥の縁側から灯がを 本当に帰るか覗いてるのですよ これから喧嘩致しますから 驚いては嫌ですよ2021/09/05
山内正
5
十年ぶりの竹井久内の未亡人は 以前より若いくらいの津乃 いつかお越しになるかもと思うておりました 国元の事情が変わりと説得に来たと 夫が家老の不正を質すと斬り込み 出奔した十年前にあり 連れ戻すためと言い出す 傷の手当の為丸見屋に世話になり 死んで一周忌が過ぎ身の回りの処分と考え妾同然の暮らしを続けて来た 丸見屋に事情を話しました 津乃様は死に時を考えておられます 笛の師匠を始められて弟子が出来増えましたが慰めにもならず 貴方だったのですか十年もお待ちになって 貴方に譲ると 私の勤めは終ったと申された2021/08/29
山内正
4
調合した薬を持ち千駄ケ谷で余世送る喜作の家に 昔の下僕の 訪れる者は迷惑しておられます 勘定奉行で丸亀へ流罪になり 二十ニ年江戸で五年 八十近い父上 悪名は消えていないのです鳥居耀蔵と名は 息子が諭す 川を歩き林を抜けて 息子の声で気が付く 茶店に寝かされていた 母親も体が弱ってと寺の別当と話す声が 礼もそこそこに この薬を飲ませろと店を出た 三右衛門と下役と勘定奉行の時世話を掛け 娘が縁の娘とも知らずに 家に別当がもしや耀蔵のと訪ねて来た 親不孝と存じますが動けなくて ほっとしておりますと2021/09/14