内容説明
「初めに形ありき!」宇宙における調和は幾何学に基礎があると信じ、天球に数学的な図形を探し求めたヨハネス・ケプラー。本書は、天文学に捧げた彼の半生を追いながら、科学的真理は幻想から生まれることを描いたヒストリオグラフィック(歴史記述的)・メタフィクションである。1981年度英国ガーディアン小説賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
em
14
16-17世紀、神聖ローマ帝国でルドルフ二世の帝国数学官となったケプラー。 この人もまた、ルルスのように世界の調和を司る法則を見出そうとしていた。しかし実生活は崇高な調和とは程遠く、宗教上の体面や世俗的な問題に悩まされる姿がよく描かれています。そんな中であちこちに飛ぶ思考と真理への執念、不意に訪れるひらめき。順列でない時系列や手紙の羅列は、そうしたケプラーの生を強調しているようでした。そしてこの時期のプラハといえば…皇帝に呼び出されて駆け上がった宮殿への道は、もしや黄金の小路かなと思ったり。2017/10/21
めぐ
9
ジョン・ヴァンビルはずっと前に「海に還る日」を読んでいい印象がありました。それとはかなり異なる作風、しかも変わった作品だと思います。凝りすぎていてちょっと浸りきれませんでした。ちょっと誤字脱字が目につきすぎて、それも気が散る原因になった気がします。ただケプラーという人に興味を持てたり、近代以前の天文学についてもっと調べてみようと思ったりするきっかけにはなりました。2017/10/11
Mark.jr
3
ズバリ読み所は、人間関係、信仰、さらに自身の科学の仕事に悩む、人間臭い偉人johannes keplerの主人公像と、解説でも語られている通り、かなり人工的に作り込まれた小説の構造とのギャップでしょう。ただ、小説の仕掛け自体が、翻訳では分かり辛いのがねっくかも。2020/02/26
youtom
0
形式だの調和だのに拘る、ポストでモダンな非モテ臭と、哀愁漂う素敵な一品。「死ぬものか」という執着が最後まで潔い。2012/03/11