出版社内容情報
笠原 十九司[カサハラトクシ]
著・文・その他
内容説明
戦争に至る憎悪のメカニズム。1937年7月29日、北京近郊の街・通州で、日本軍の傀儡政権であった冀東防共自治政府の保安隊が反乱を起こし、日本人居留民225人(日本人114人・朝鮮人111人)が虐殺された通州事件。日中戦争研究の第一人者が、事件の真相と被害者姉妹の苦難に満ちた「戦後」の道のりをオーラル・ヒストリーの手法を用いて叙述する。
目次
第1部 通州事件はなぜ発生したのか―歴史的要因と全貌の解明(通州事件の歴史背景;冀東保安隊はどのような軍隊だったのか;冀東防共自治政府と冀察政務委員会;中国国民の怒り、怨嗟の的になった冀東政権;華北における抗日戦争気運の盛り上がり ほか)
第2部 憎しみの連鎖を絶つ―通州事件被害者姉妹の生き方(満州への移住と病院開設;通州事件に遭遇した鈴木家;“戦争孤児”になった姉妹;憎しみの連鎖を絶つ)
著者等紹介
笠原十九司[カサハラトクシ]
1944年群馬県生まれ。最終学歴:東京教育大学大学院修士課程文学研究科東洋史学専攻中退。学位:学術博士(東京大学)。職位:都留文科大学名誉教授。専門分野:中国近現代史、日中関係史、東アジア国際関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
49
歴史というものは難しいものだ。事件のきっかけになった前史があると、そこのかなりのページを割いています。それは、この意見を描くための必然であり、説得力があります。この事件自体、知りませんでしたから、先入観がない分、ストレートに感じることができたと思います。そして、そこに何ら疑うものもないように感じます。素晴らしい歴史本だと思います。しかし、戦争というものは、起こそうと思った者たちには影響がなく、弱い者たちがただ、ただ巻き込まれてるものなのだ。2024/11/10
harumi
5
歴史的事件というものは突然起こるのではなく、必ずそこに至る長い前史があるという著者の理念のもと、1937年に起こった通州事件(1937年に中国の通州という所で日本人韓国人合わせて200以上が中国人によって虐殺されたという事件)の前史をかなりのページを割いて著している。非常に緻密に調べられていて、この一冊を書き上げるのにどれほどの労力と時間を使ったのかと、歴史の研究とはこういうことなのかと感銘を受けた。知らなかったことばかりで読んで良かったと心から思う。2024/10/03
蝮
2
ネトウヨ=歴史修正主義者が大好きな「通州事件」。北京近くの通州にいた日本人と朝鮮人はなぜ、日中全面戦争直前に虐殺されたのか。前史と前夜をとことん分析すると見えてきたものは。緻密な歴史研究が冴えわたる。最終章は通州事件を生き延びた姉妹の貴重なライフヒストリーで、姉妹それぞれの言葉が胸に迫る。2024/08/19
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