内容説明
イラク戦争に派兵せず、米国主導のミサイル防衛にも参加しない―多国間協調主義を掲げるカナダの外交戦略。建国以来、自立路線を追求してきたカナダ外交の歴史から学ぶ、超大国アメリカとの「つきあい方」!2004/05カナダ首相出版賞審査員特別賞受賞作品。
目次
第1章 カナダは参戦せず
第2章 「反米」の歴史とカナディアン・アイデンティティ
第3章 カナダと米国の関係―経済と軍事
第4章 カナダの多国間協調主義
第5章 反米と親米の間でゆれるカナダの宿命
第6章 カナダの外交・防衛政策の基本戦略
著者等紹介
吉田健正[ヨシダケンセイ]
1941年沖縄県糸満市で生まれる。ミズーリ大学および同大学院でジャーナリズムを専攻。沖縄タイムス、AP通信社(東京支局)、Newsweek(同)の記者、在日カナダ大使館勤務をへて、1989年から桜美林大学国際学部教員。『カナダはなぜイラク戦争に参戦しなかったのか』で、「2004/2005年度カナダ首相出版賞」を受賞した
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
更紗蝦
17
「経済的にも軍事的にもアメリカと密接な関係を持っているカナダが、なぜイラク戦争に加わらなかったのか」がテーマになっている本ですが、日本の外交政策がいかにお粗末かが身に染みて分かる内容になっています。これは、政権批判をするためにカナダをダシにしているわけでは決してなく、「人間の安全保障」を掲げて難民の受け入れや対人地雷の禁止や国連平和維持活動などに力を入れているカナダの「有言実行ぶり」を見れば、おのずと日本の「言行不一致ぶり」や「主権国家としてのだらしなさ」が浮き出てくるということです。2017/12/25
sasha
7
アメリカと緊密なつながりのあるカナダだが、アメリカの言うことをなんでも「その通り」とは言わない。キューバとも交易していたし、アフガン戦争に続くイラク戦争には不参戦。イラクを攻撃する理由がないから。正に正論。国内に反対意見もあったが、アメリカとの二国間の関係よりも多国間協調主義を貫くカナダは、世界の中では結構重要な働きをしているんだな。掲載データは古くなってしまっているが、アメリカに反対意見をぶつけながらも良好な関係を維持しているカナダ外交は勉強になった。2017/09/27
なおこっか
6
カナダの建国は1867年。比較的歴史の浅い国が、隣接する超大国に呑まれることなく独自の立ち位置を貫いた経緯を、歴史、政治、軍事、経済などの説明を交えて丁寧に解説している。カナダの有り様は多国間協調主義、国連の理念に沿い、大量破壊兵器の見つからないイラクへの攻撃には加わらない。根底には真の多様性とも言える政治指針があり、元来イギリスとフランス、原住民の、異なる文化圏を共存させ、モザイクとして残そうという理念は、経済的にアメリカに迎合してしまえという意見を上回る。内田樹氏の紹介本。2021/09/19
オカヤン
2
がアメリカとの関係が歴史からもよく学ぶことができた。結局カナダはイラク戦争にあえて参加しなかったけど、アメリカから経済制裁もなかった。カナダの多国籍協力関係はかっこいいと思った。
星辺気楽
1
カナダ政権のアイデンティティに敬意を表するとともに、日本政府の無責任さを痛感しました。2017/12/19