内容説明
周りの人には厳しかったが、娘にはやさしかった父。そんな父が臨死の病床で、「俺が死んだら墓に彫りつけてくれ」と、中国人へのお詫びの紙切れを渡す。それから著者の旅は始まる。父の悲しみを悲しむ旅は、娘の心が熱く溶けていく旅でもあった。戦争の家族史は戦後世代の自己形成史と結ばれる。
目次
第1章 謝罪の碑
第2章 自分を見つめる旅
第3章 被害と加害のはざまで
第4章 中国への謝罪を伝える旅
第5章 戦後世代の胸の空白
私の「心の旅」を振り返って―小柳茂子さんとの対話
著者等紹介
倉橋綾子[クラハシアヤコ]
1947年群馬県に生まれる。早稲田大学第一文学部卒業後、71~90年、東京都内で中学教員を務める。教職を退いた後、「手をつなぐ戦後世代の会」「ノーモア南京の会」「ATグループNAT’S」「中国人元『慰安婦』を支援する会」など、さまざまな活動に加わる。「日本民主主義文学同盟」同盟員
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感想・レビュー
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カドリール
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読みやすい。著者の葛藤やもどかしさが素直に伝わってきました。内容はこの立場からならこれくらいが限度かなと。主義主張ではなく、家族の視点からの学びの経緯なのですんなりききやすかったです。カウンセリングの部分はもっと短いほうが焦点が散漫にならなかったかな。あと、中国行きはもう少しクールダウンしてから文章にしていたらさらによかったと思いました。自分ももっときちんと目を向けるべき話しであることはよく分かりました。2014/04/28
星辺気楽
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憲兵だった父親の中国戦線での加害を詫びる遺言を誠実に果たそうとする筆者の姿に感動するとともに、いつまでも解き起こせない父親の真実の姿がもどかしかった。面子に拘る指導者たちに加害・被害直接かかわった名もない庶民たちの苦痛を味あわせたい。2013/11/20
RuiRui
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組合活動に熱心だった(もと)社会科の女性教諭が父親から「戦争謝罪の銘を墓に刻んでくれ」という遺言を貰って悩みぬく第一章。ただ父親とは生前、戦争関係の対話はほとんどなく、知人等からわかったこともほとんどなくて、立場は理解するが読んでてモヤモヤする。自分語りの第二章。慰安婦、南京について聞いた話を特に検証もせずにそのまま書き連ねる三章と四章。けじめをつけるために中国へ向かう旅行記第五章。まとめの第六章。文章はわりと散文的でした。2013/08/22