出版社内容情報
20世紀の希望・ソ連は遂に崩壊した。ソ連崩壊の以前・以後、ソ連を一貫してその「内臓から見つづけてきた」著者が、ロシア人への親愛を保持しながら、社会主義国家ソ連の本質的犯罪性を弾劾する。
●「街頭」という位相から、〈ソ連〉という謎に迫る
ソ連を語るに「クレムリン」という位相は相応しくない。ソ連という謎に迫る方法として著者がとったのは、「街頭」という位相であった。遠く聳立するクレムリン権力を、「街頭」「路上」というリアリティに引き寄せてこれを撃つこと。ここから、声高に叫ばれるスローガンや新聞に溢れる公式報道の陰で、ソ連人はかく生きている、という著者独特の情況論が生み出されていった。こうしてパステルナーク事件からチェルノブイリ原発事故まで、またゴルバチョフのペレストロイカからソ連崩壊まで、ペレストロイカを挟んで、「ソ連」から「ロシア」へなし崩し的に移行する全情況が活き活きと考察される。
●ユートピアへの磔刑――クリミナル・ソシアリズムの運命
20世紀のユートピアを目指して船出したソ連が行き着いた場所こそ「ユートピアへの磔刑」にほかならなかった――この痛切なパラドックスを踏まえ、ソルジェニーツィンの『収容所群島』に比肩する、J.ロッシ『ラーゲリ(強制収容所)註解辞典』を採りあげながら――ロッシはまた内村剛介の獄友であり、個人的盟友でもある――その「私的註解」という形式を借りて、自ら生み出したラーゲリに喰われて自滅に向かう「クリミナル・ソシアリズム」の諸様相を描く。
モスクワ街頭の思想 目次
1 1958~1964
目次
1 1958~1964(知識人と権力―パステルナークの立場;ソ連社会の失われた世代と若い世代 ほか)
2 1986~1990(何も変えない大改革―ゴルバチョフのモード;黙示録・チェルノヴィリ ほか)
3 1991~1992(舵とともに来たり去るゴルビー;何のために誰をなのか具体的に言え ほか)
4 J.ロッシ『グラーグ・ハンドブック』私註(ナショナルとは何か―をあらためて考える;二十世紀は収容所の時代 ほか)
著者等紹介
内村剛介[ウチムラゴウスケ]
評論家、ロシア文学者。1920年、栃木県生まれ(本名、内藤操)。1934年、渡満。1943年、満洲国立大学哈爾濱学院を卒業。同年、関東軍に徴用され、敗戦とともにソ連に抑留される。以後、十一年間をソ連内の監獄・ラーゲリで過ごし、1956年末、最後の帰還船で帰国する。帰国後、商社に勤務する傍ら文筆活動を精力的に展開し、わが国の論壇、ロシア文学界に大きな影響を与える。1973年から78年まで北海道大学教授、1978年から90年まで上智大学教授などを勤める
陶山幾朗[スヤマイクロウ]
1940年、愛知県生まれ。1965年、早稲田大学第一文学部を卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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