内容説明
なぜ皆、こんなにも「させていただいて」いるのか?さまざまな分野の言語学者が各々の視点から語る、「させていただく」研究のフルコース!
目次
第1部(特別寄稿「させていただく」は敬語体系の欠陥を補う;幻の講演を再現 敬語の歴史社会言語学―関西起源のテイタダク)
第2部(敬意漸減―すり減って止まない敬意が引き起こすこと;テモラウの依頼用法―テイタダク成立への契機;漫才談話の結末句の機能と変遷;「させていただく」の地域差は、どういう地域差なのか―世論調査と「食べログ」調査にみる;参与者追跡の観点から見た「させてもらう」の機能;「させていただく」はなぜ一人勝ちしたか?―ベネファクティブの変遷に見る敬意漸減プロセス)
著者等紹介
椎名美智[シイナミチ]
お茶の水女子大学大学院博士課程満期退学、ランカスター大学大学院博士課程修了(Ph.D)、放送大学大学院博士課程修了(博士(学術))。現在、法政大学文学部教授。専門は歴史語用論、コミュニケーション論
滝浦真人[タキウラマサト]
東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退、博士(文学)(北海道大学)。現在、放送大学教授。専門は言語学、語用論、イン/ポライトネス論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ががが
6
「させていただく」という表現に関する論考。興味のある論文だけ読んだ。この表現が謙譲語にしにくい動詞に対しての汎用性が高いために敬語体系の穴を補うという考察から、敬意のインフレによって発達した形式だというもの、謙譲語から美化語の変化の途上であることを裏付けるものなど、様々な分野での「させていただく」の研究報告は、日本語の体系そのものに起こり得る変化の表面を捉えていて奥が深い。私個人としては使役の「させて」の意味を強く感じてしまってあまり好きではないのだが、この語の使用拡大と変化は止められないだろう。2023/03/05
ともりぶ
2
思ったよりきちんとした研究書だった。そこまでしっかり知りたいわけではなかったので全体を流し読み。漫才の「やめさしてもらうわ」まで扱われてるのが興味深かった。2023/05/01
K.C.
2
あとがきにも書かれているが、これはアカデミックな研究会の発展的解消としての論文集でもある。さらっと読めるテイストのものではないが、「させていただく」を体系的に論じたものとして、編者のひとりの著書と並列されるものだろう。漫才のおわりの言葉とか、そういう視点は新鮮。2023/03/07
Myrmidon
2
言語学者たちによる、紙上研究会発表(実際、コロナ禍で不可能になった研究会の発展的解消らしい)。さまざまな論者が「させていただく」を中心としたベネファクティブ(やりもらい系補助動詞)に関する発表を行う。以下は自分用まとめ。「させていただく」の隆盛は、①敬意漸減、②謙譲語の穴、③「いたす」の尊大ニュアンスの回避あたりが原因で、関西起源だが、関東に伝わった後で独自の進化を遂げたものが広がったふしもあり。その関係か、現在では地域差は多少あるが大きなものではない。くらいか。勉強させていただきました(笑)。2023/01/12
果てなき冒険たまこ
1
思ってたのと違って言語学者さんの言語学的アプローチによる「させていただく」の研究本。はじめのうちはこれじゃないんだよなーと思って読んでたけどそのうちにそうそうと頷いてる自分がいた。敬意漸減現象や丁寧な自分を演出するとかなかなか腑に落ちてきた。言語学者さんたちはあらゆる場面を想定しなくちゃいけないからたいして面白くない章もあったけどそれでも読んでよかった感はある。それでも「させていただく」を連発するおバカはいなくなりはしないんだろうけど。 2023/03/28