内容説明
なぜ皆、こんなにも「させていただいて」いるのか?さまざまな分野の言語学者が各々の視点から語る、「させていただく」研究のフルコース!
目次
第1部(特別寄稿「させていただく」は敬語体系の欠陥を補う;幻の講演を再現 敬語の歴史社会言語学―関西起源のテイタダク)
第2部(敬意漸減―すり減って止まない敬意が引き起こすこと;テモラウの依頼用法―テイタダク成立への契機;漫才談話の結末句の機能と変遷;「させていただく」の地域差は、どういう地域差なのか―世論調査と「食べログ」調査にみる;参与者追跡の観点から見た「させてもらう」の機能;「させていただく」はなぜ一人勝ちしたか?―ベネファクティブの変遷に見る敬意漸減プロセス)
著者等紹介
椎名美智[シイナミチ]
お茶の水女子大学大学院博士課程満期退学、ランカスター大学大学院博士課程修了(Ph.D)、放送大学大学院博士課程修了(博士(学術))。現在、法政大学文学部教授。専門は歴史語用論、コミュニケーション論
滝浦真人[タキウラマサト]
東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退、博士(文学)(北海道大学)。現在、放送大学教授。専門は言語学、語用論、イン/ポライトネス論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ryoichi Ito
6
「させていただく」という言葉は明治時代から使われ始め1990年代に急増した。政治家が多用し,特に鳩山首相や麻生首相が多用したので「させていただく」症候群という言葉さえ生まれた。わたしは学会発表の際,関西の人の多くが「発表させていただきます」というのに違和感を覚えた記憶がある。一方「させていただく」に対する批判も盛んで,違和感を覚える人が多い。本書はこの言葉に関する専門家の論文を集めたものだ。素人にはあまり参考にはならないが,冒頭の「「させていただく」は敬語体系の欠陥を補う」(飯間浩明)は説得力があった。 2024/08/24
ががが
6
「させていただく」という表現に関する論考。興味のある論文だけ読んだ。この表現が謙譲語にしにくい動詞に対しての汎用性が高いために敬語体系の穴を補うという考察から、敬意のインフレによって発達した形式だというもの、謙譲語から美化語の変化の途上であることを裏付けるものなど、様々な分野での「させていただく」の研究報告は、日本語の体系そのものに起こり得る変化の表面を捉えていて奥が深い。私個人としては使役の「させて」の意味を強く感じてしまってあまり好きではないのだが、この語の使用拡大と変化は止められないだろう。2023/03/05
たろーたん
2
敬語体系には欠陥がある。基本的な語彙の謙譲語がないのだ。基本的には「お~する」「お~申し上げる」をつけるが、例えば、着る、死ぬ、寝る、歩く、休む、運転するなどはそれができない。それ故に、着させて「いただきます」、運転させて「いただきます」といただきますを使わなくてはならなくなる。つまり、「させていただく」は欠陥がある謙譲語をなんとかするためにあり、それを使うのは何もおかしなことではない。(続)2024/05/17
ともりぶ
2
思ったよりきちんとした研究書だった。そこまでしっかり知りたいわけではなかったので全体を流し読み。漫才の「やめさしてもらうわ」まで扱われてるのが興味深かった。2023/05/01
K.C.
2
あとがきにも書かれているが、これはアカデミックな研究会の発展的解消としての論文集でもある。さらっと読めるテイストのものではないが、「させていただく」を体系的に論じたものとして、編者のひとりの著書と並列されるものだろう。漫才のおわりの言葉とか、そういう視点は新鮮。2023/03/07