出版社内容情報
14才の夏、崖の土砂が崩れるように座り込み動けなくなった私はやっと動かせる指先で体内の激情を小さな電子文字に落としこむ。他人と隔絶され数年を過ごした今、世間の批評を受ければ過去の私は肉づき現在の私となめらかに連結する。
17才 果物が自らを割って流す蜜のように 思いは溢れるもの……
14才の夏、崖の土砂が崩れるように座り込み動けなくなった私は唯一自由になる指先で体内の激情を小さな電子文字に落としこむ。他人と隔絶され数年を過ごした今、世間の批評を受ければ過去の私は肉づき現在の私となめらかに連結する。
カバーイラスト:矢野七海(第1回 童画・つぶやき・えほん塾最優秀イラスト賞受賞作品)
■「背もたれのない椅子」
背もたれのない椅子に座っている
視点は平民よりも上にある
人々の髪の生え際を
真上からつれづれと見渡せる
生まれながらにして
審判を下せる位置にいる
地上を懸命に這う二本足に憧れて
階下に飛び移ろうにも
椅子は何故か
その平坦な地面に前触れもなく稲妻の鋭さで刻まれた
底の知れない恐ろしい亀裂の
丁度中心に据えられている
■「発露」
私の感受性をあざけって
なおざりに排泄するだけの体が嫌だった
言葉が欲しいとおもった
自分の体をはなれた清潔な舞台で
気持ちがみずみずしく立ち上がるのが見たかった
■「覚悟」
あの人に会いたい
会うためにまず
私は
私を信じなければならない
あの人に会って
話して 触れて
その物をあの人だ と識別するためには
私は私の触覚や知識や記憶を
あの人の優しい言葉やぬくもり以上に
信じなければいけない
■「別格」
愛を疑うくらいなら
見世物小屋に売られるほうがよほどましだ
さわやかな軽蔑をこめて
細菌に触る手袋ごしの
ぬるくて荒々しい優しさに触れたとき
私は初めて
心をふりしぼって愛することができる
(以上、本文より一部抜粋)
プリズム
コレクション
落とし物
写真
別れ
横顔
光年
冬
侶伴
硝子
壊れる
発露
砂袋
暗がり
プランクトン
時間
背もたれのない椅子
赤ん坊
腫瘍
白無垢
現代風情緒
我儘
涙
畏怖
鎮魂
慈悲
夜半
明日
覚悟
矛盾
自由
Xmas Everyday
予感
惰性
月末
寝覚め
落花
独立
レベル0
或る日
精製
結実
無理矢理に死へと投じた人たちへ
暴力
別格
学習
目次
プリズム
コレクション
落とし物
写真
別れ
横顔
光年
冬
侶伴
硝子〔ほか〕