内容説明
助監督、ピン芸人、小説家志望の男と4人で阿佐ヶ谷のアパートに共同生活。長く付き合った恋人に別れを切り出されれば嫌だ嫌だと泣いてすがり、バイトもろくにせずに実家の母に仕送りを無心する、二十九歳、脚本家志望の男・大山孝志は、有名な映画とマンガをもろにパクったシナリオを書いてコンクールに応募したが―。映画『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本を手掛ける映画監督で脚本家、小説家でもある、足立紳。まったく先が見えずにウダウダとしていた時代の実話を交えた青春小説。
著者等紹介
足立紳[アダチシン]
1972年生まれ、鳥取県出身。映画監督、脚本家。脚本を執筆した映画『百円の恋』(14)が第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、NHKドラマ『佐知とマユ』(15)が第4回市川森一脚本賞、映画『喜劇 愛妻物語』が2019年東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年放送、第109作となるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本(櫻井剛と共同)を執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
73
少しツキがない時期だけれど、真っ直ぐに頑張っていて友達も大事にする。彼女と諍いもあるけれどもって生まれた性格の良さで乗り越えられる。そんな青年の話なら私はこんなにも引き込まれない。このダメ男のエピソードのひとつひとつに舌打ちが出る。みっともなくて哀しくなる。アパート「稲川邸」に一緒に暮らす仲間も似たり寄ったり。漫才のようなやり取りの場面も、ここがもしや足立紳の実体験ではと思うと尻すぼみの笑いになる。「幸せになれたらいいねえ」なんて甘いもんじゃない。春よ来てやってくれ、マジで来てやってくれ。この男のもとに。2024/01/03
keroppi
64
朝ドラ「ブギウギ」の脚本を書いた足立紳の青春小説。青春と言っても30歳くらいだから、普通は青春は過ぎているのかも。しかも、脚本家を目指しながらなかなか書けないし、女性たちとも惚れられているようで振られまくっている。うだつの上がらない仲間たちと飲んで騒いでいる。著者も後書で永島慎二「若者たち」を目指したと書いているが、そんな感じかもしれない。本の中では春は来ないが、現在売れている著者の青春思い出物語ということか。だらしなく優柔不断な主人公の心理描写が何か若かった頃の自分を思い出させてしまう。2024/03/01
rosetta
29
★★★☆☆脚本家で映画監督の人が書いた半分自伝的な小説。2002年映画学校の友達と4人で阿佐ヶ谷の2LDKでシェアハウスしている脚本家を目指す大山。目指すと言いながら女の子との事にうじうじしていてまるで脚本を書いていない。普通こういう主人公でも愛おしくなって感情移入するものだがこの本では全くそんなことを思わなかった。30にもなって実家から仕送り貰ってまるで生産的でない。クズでグズでこんな奴に成功なんてして欲しくないとしか思えない。そういう意味でご都合な成功に終わらなくてそこを納得しただけの小説2024/01/27
抹茶モナカ
8
ウダツの上がらなさ、優柔不断さに共感というか、感情移入してしまった。著者とは世代が近いのか、サブカルチャーで登場したものも懐かしく、わかるわかる、と。もう少し校正に力を入れて欲しかったですが。2023/12/31
オールド・ボリシェビク
5
足立紳のダメ男シリーズ最新作。うだうだと東京・阿佐ヶ谷のアパートで暮らす若者たちの群像を描く。ほとんど実話なのだろう。一種の私小説だ。主人公は脚本家志望。作家志望の男、お笑い芸人、東大卒の引きこもり男と共同生活をしている。恋人に別れを告げられ、未来に何の希望もないが、もうすぐ30歳だ。だらだら続く日常の中。先輩から紹介されて大学の映像学科の講師として働くことになる。こういう青春を送っても足立紳、何とかなったんじゃん、良かったね、と思わせてくれる読後感あり。2023/11/25