感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
53
河北歌壇の選者お二人が選んだ震災から1800日の間に寄せられた膨大な数の歌から選んだ約650首。《生き残りごめんなさいと言う祖父に強く頭ふるテレビを見つつ》《妻の名を心に叫び探しいる巨大津波の瓦礫のなかを》《原発もアスベストさえ良き物と云われし時代ただ生きてきたり》《ぽつねんと自販機一台置かれあり海へと続く広き更地に》《仮設より出る見込みある勝組と無き負組と神は分かちぬ》《つづまりは自己責任といふことか救命のために死するいのちも》被災した一人ひとりの無念が控えめに綴られるのが言いようもなく哀しみを誘う。2021/03/11
kaoru
19
「河北歌壇」に震災から1800日までの期間に寄せられた短歌のなかから佐藤道雅氏と花山多佳子氏が選んだ650首。「がれきからアルバム出れば素手となり土払いくれし自衛隊員」「海なれば母とおもいて来しものを憎悪のごときが心を過ぎる」「あの日より前に進めぬ弱き母を許して欲しいと亡き息子に詫びる」「ただひとつ生き残りいる自販機のコーヒーから朝始まる除染」あまりにも大きな災害に直面しながらも我慢強い人々は慟哭を歌うにも控えめだ。佐藤氏の「はじめに」には「人間の魂の記録として」との副題が記されている。2020/03/15
風に吹かれて
12
「大地震(なゐ)にゆられし脳はとめどなくさまよふごとく思考が狂ふ」…言葉が心をいやすなどと思うまい。言葉にすることでなおいっそう苦しみがやって来ることもあるに違いない。心の底から迸った言葉。本書は、まさに「人間の声」で溢れている。 ああ、こんな「うた」も…「震災の見舞いと電話で孫唄ふ曲はやっぱり「森のくまさん」」…。 2021/06/17
かりん
7
4:《震災を詠んだ短歌たち。》河北新報の歌壇に寄せられた震災関係の短歌が5年分。生々しさよりも、体験者ならではの避難生活の断片や行き場のない感情の表現がぐっと迫ってきます。「備蓄せし桃缶開けてふた切れを灯の中で六つに分ける」「三日ぶり息子の無事を知りしとき振りさけ見たる空青かりき」「母と家を失いましたと面接の少年の眼黒く動かず」「外来種の店がにょきにょき生えてきて更地占拠し町は二度死す」「男来る戻り鰹をぶら下げて地に滴れる三陸の海」「なんだかね自分もガレキになっちまった ガレキはガレキを片付けられない」P2019/03/08