内容説明
雇用不安、原発事故、保守化…過去3回にわたり、福岡・大阪・東京の1万人をこえる高校生の意識調査の分析。今日の若者像がビビットに浮かび上がる。
目次
序章 21世紀の日本社会と第3回高校生調査
第1章 規範に同調する高校生―逸脱への憧れと校則意識の分析から
第2章 日常生活場面における規範意識
第3章 若者的コミュニケーションの現在―高校生の友人関係志向に見る
第4章 物の豊かさを求める高校生―「失われた20年」における価値観の変化
第5章 保守化の趨勢と政治的態度
第6章 性別役割分業意識の変容―雇用不安がもたらす影響
第7章 高校生の非正規雇用リスク認知
第8章 東日本大震災と原発事故以降のリスク意識
第9章 震災後の高校生を脱原発へと向かわせるもの―自由回答データの計量テキスト分析から
著者等紹介
友枝敏雄[トモエダトシオ]
1951年熊本県熊本市生まれ。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
19
2013年調査、震災2年後の意識調査。■8章東日本大震災と原発事故以降のリスク意識[阪口祐介,166-185]。実はこの章が最も衝撃を受けた!。「エリート校、理系、男子では原発リスク認知や脱原発志向が低く、東日本大震災の影響をあまり受けていない」。○価値観と脱原発。政治に国民の意見が反映されないと考える人は脱原発支持度高い。逆に言えば、政治への信頼は原発支持。戦争責任への見解、自民族中心主義、愛国主義の三つの国家観のうち、関連性が見られたのは戦争責任への見解のみ。太平洋戦争で謝罪すべきだと考える生徒は→2019/12/10
小鈴
15
■1章規範に同調する高校生[平野孝典,13-32]。逸脱への憧れは大幅に低下、校則を守るのは当然、高校生は規範への同調性を高めている。特に校則を守るのは当然という意識は普通科B、職業科に顕著。規範への同調性は進学校の方が非進学校・職業科よりも高いという伝統的パターンが崩壊、変容。■2章日常生活場面における規範意識[杉村健太,33-56]。この章でも高校生の規範への同調性は高まっているという結論。但し、規範意識と権威主義の間には正の関係性は見られない。規範意識を「公共の場における規範意識」→ 2019/12/10
小鈴
13
興味深い論考。2001年から6年ごとに意識調査している。2001は福岡のみ,2006は福岡、大阪、2013は福岡、大阪、東京の三都市。9章の論文で構成されるが第1章規範に同調する高校生ー逸脱への憧れと校則意識の分析から、第2章日常生活場面における規範意識、第3章若者的コミニュケーションの現在、第5章保守化の趨勢と政治的態度、第7章高校生の非正規雇用リスク認知、第8章東日本大震災と原発事故以降のリスク意識を読む。一回目の調査の高校生は現在は30代半ば、二回目は30歳前後、三回目は25歳前後ですね。2019/12/10
新橋九段
4
かなり大規模な調査で、しかも詳細な分析を経て現代の若者の実情を映し出しており、貴重な仕事といえる。2019/01/11
Tsuneyuki Hiroi
1
8年前のデータ、6年前の出版なので、現在の傾向とは異なるのかもしれない。しかし若者の多くが大勢に順応的であり、保守主義的な傾向があることは、肌で感じるところであり、危機感さえ覚える。日本に従来から存在する人権侵害的な規律にあえて肯定的に応じようとするのは、グローバル化が進むこんにちにおいて望ましからざることであり、今後進む世界の一体化に乗り遅れるのではないかと危惧させる一冊だ。2021/01/13