出版社内容情報
野村日魚子[ノムラカナコ]
著・文・その他
目次
1 死者の章
2 生きている人間たちの章
( )
3 嵐になる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
114
野村日魚子かなこ。1993年生まれ。2016年、短歌をはじめる。本書が第一歌集。装蹄・画・鈴木千佳子、ナナロク社。Ⅰ 死者の章、Ⅱ 生きている人間たちの章、( )、Ⅲ 嵐になる。「雪の夜。死ねば小さな丘として地図になりたい 火事を見に行く」「やっと人間にしてもらった朝見る雨をお守りと思うみたく生きなよ」「ふゆの海の白さは目に見えない雪のせいだよ 閉じかけの傘と突っ立っている」「死後降るというその雨を見たかった何億もの人たちがしずかにあなたの病室の窓を見上げる」死と生にまつわる不穏な空気を感じる言葉たち。2023/01/13
livre_film2020
41
歌人の千種創一さんが「絶版になる前に買っておいた方がいい」と勧められていたので買った。短歌のことは全然分からないが、それでも、圧倒的才能を見せつけられた。神話など古典をベースにされているんだろうなという歌がいくつか;〈噴水で寝てるびしょびしょの人の前髪の先にもいる神さま〉。こういう歌は教養をくすぐられて楽しいのだが、私はド直球な歌も好きだった;〈あなたはすてきだ あなたはこの世に一人しかおらずあなたがすてきな理由〉。装丁も好き。眺めているだけで幸せになれる。野村日魚子さん、これから追っていきたい歌人だ!2023/02/22
このみ
14
タイトルが既に一篇の詩。王冠を巡る争いの物語の末を、ヒースが風に揺れる荒野の廃墟で聞くような気持ちで読み始めたが、おや、死者と生者の間の物語は、現代の明るいコンビニの灯りに照らされたイメージ。「生きてると死んだの間に引く線」のゆるさ。「ゆるさない絶対にゆるさないぞとびしょ濡れの犬が言いやわらかい布で拭いてやる」「洗濯機の底でくたばるシャツぼくはゆるすおまえを絶対にゆるす」百年の歳月に晒され、「絶対」許さない、と言われたい。恋さながらに。「小さな森でしあわせに暮らす 盗まれた首を取り返したいとも思わず」2022/11/28
冬見
11
「いずれ死ぬ人のことをおもうとき春なのになんで一面の雪?」歌集を読む時は好きな歌をメモにまとめながら読む。ページをめくり、読み、声に出し、メモをとり、またページをめくる。それを繰り返していたら、最初の六つの歌すべてをメモに残していることに気づいた。わからなくて、知りたい、と思う。見たい、と思う。文字をたどる、声に出す、立ち止まる、ページをめくる、また声に出す。何度か休憩を挟んで、読み終わったころには声が枯れていた。「また百年経てば死ぬんだおれだけが あのときこわかった 犬 なんだっけ」2023/03/17
美葉
9
「洗濯機の底でくたばるシャツぼくはゆるすお前を絶対にゆるす」「あなたはすてきだ あなたはこの世に一人しかおらずあなたがすてきな理由」 帯の詩よりこれがすき。他にもちらほら好きな詩がある。ノートに書き留めよう2024/05/24