出版社内容情報
官能文藝
内容説明
閉塞感あふれる時代に使用済下着を売る若妻には自覚のない理由があった。私を壊して。もっと強く、もっと奥まで。密やかな欲望が叶うとき、忌まわしい記憶から解放される自伝的官能世界。
著者等紹介
滝川杏奴[タキガワアンヌ]
神奈川県横浜市生まれ。元にっかつ社員、ロマンポルノ企画宣伝部。早乙女朋子名義で、第8回小説すばる新人賞受賞。2018年『天使が濡れるまで』で官能デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nishiyan
8
ふとしたきっかけから使用済み下着を売ることになったセレブ妻・裕美子が心の奥底に眠っていた欲望を開花させる官能ロマン。平穏な日常が徐々に浸食されていくとともに、裕美子の過去が明らかになる展開は鮮やか。濡れ場はじっとりとした雰囲気に濃い男女の臭いが漂うのだが、裕美子の欲望が満たされているかどうかの有無で印象が変わっているのが興味深い。キーパーソンである金町の人物像も面白く、どこか憎めない点が好感が持てるのもよかった。初めての男の面影を追っていた裕美子が迎えたラストは心地よいものだった。2022/06/13
古本虫がさまよう
2
32歳の美貌の専業主婦が主人公。夫は某有力一族企業の御曹司。いまは外で修業中。それがふとしたことで、使用済下着を売ることになる。シンク直しに自宅にきた男の副業がそれだったのだ。女高生のような脱ぎ捨てた下着を提供するといった軽いバイトではなく、淫らなことをして下着を汚しそれを売るのだが、その淫らな行為の一部始終を映像で紹介しての販売(顔はモザイク)。金に困ったわけでは無論なく、そのシンク直しの男に唆されてというか、惑わされてというか、迎合してというか、そういう微妙な女心の心理の変化が巧みに描かれている。2022/07/14
にこちゃん
0
主人公は、闇サイトで下着を売り続けるセレブ人妻。実は、ある男との出会いによって封印していた記憶が解き放たれ、性の衝動を抑えられなくなったという設定。性をモチーフにした心理サスペンスという趣だが、畳み掛けるようなテンポの良い展開はお見事。前半からは想像も出来なかった意外な結末に驚いた。滝川杏奴、なかなかのストーリーテラーである。桜木紫乃 のようなソフトな性愛小説かと思ったら、どうして、どうして。描写はかなり本格的でした。2022/04/01
ageha
0
押し売りではなく「押し買い」の金町に、世間知らずの裕美子が、風俗にあれよあれよと巻き込まれていくくだりから始まる。上級国民と作業員。このふたつのキャラの描写がリアル。裕美子が、惹かれていく男の匂いが、読んでいて伝わってくる。濡れ場描写の、それぞれの書き分け方にびっくりした。物語の展開に、ドキドキしっぱなしで、最後は圧巻の読後感だ。金町がステレオタイプのブルーカラーでなく魅力的だった。2022/04/01