出版社内容情報
寿命が延び高齢者が増えていくのと同時に、私たちにとって死はより身近なものになっていく。戦中、戦後の混乱期を除けば、現代ほど死と向き合い、見つめ直すべき時代はないといってもいい。
そうした社会状況の変化にともない、医療の世界では医師と患者の関係も以前とは随分変わり、医師にすべてを任せる治療から、患者の自己決定を重視する治療へと変化している。
インフォームド・コンセントの考えが普及したことにより、ガンなどの病気を患者に告知する割合もかなり増えているようだ。また、終末期の患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を高めるため、在宅を含めターミナルケア(終末期ケア)を行なうホスピスも格段に増えている。
しかし現実には、治療方針などについて家族の間で意見が分かれたり、最悪の場合は仲違いが起きてしまうこともある。また、どうしても死んでほしくないという家族の強い思いが、死にゆく人を苦しめてしまう場合もある。
すると、死にゆく人自身は家族が争う姿を見たくない、これ以上悲しませたくないと思い、本心を言えないまま一生を終えてしまうことになってしまう。家族としては、よかれと思って望んだ延命治療が逆に死にゆく人に不必要な苦しみを味わわせてしまい、やすらかで自然な死を妨げることになってしまう場合もある。
大切な家族を亡くしたうえに、大きな後悔を背負ったまま生きていかざるを得なくなってしまった人に、著者は何度も会ってきた。
では、どうすれば死にゆく人を安心させて、穏やかで幸せな最期を迎えさせてあげることができるのか。残された人が大切な人を失った悲しみや後悔を癒やして、これからの人生で前を向いて生きていくには何が必要なのか。
誰にとっても死は怖いものであり、つらく、悲しいものだ。大切な人にはできるだけ長く生きていてほしいと思うことは人として当然のことだ。そして、いまだ死は縁起の悪いものとして忌み嫌い、苦しく、つらいだけのものととらえている人が多いのが現実だろう。しかしこうした考えはもう捨ててしまっていいのではないかと私は考えています。なぜなら、死というものは、けっして苦しいこと、悲しいことだけではないからです。
死とは人生において最期の大仕事である。生と死は切り離されたものではなく、誰もが死によってこの世での人生を完成させることができる。
そして、死にゆく人には次につながる生があり、死は残された人たちに人生でもっとも大切なことを教えてくれる。
どうして、そんなことがいえるのか……カトリックのシスターとして、これまで多くの人の死に立ち会い、看取ってきた経験からも、その理由を本書では説いていく。
内容説明
家族、そして大切な人―。やがて訪れる最期を幸せに見送るために大切なこと。
目次
プロローグ
第1章 身をゆだね、死への怖れを手放す
第2章 「聖なるあきらめ」をもって死を受け入れる
第3章 死にゆく人との「仲よし時間」を大切にする
第4章 家族でともに向き合う死へのプロセス
第5章 死があなたに教えてくれる大切なこと
著者等紹介
鈴木秀子[スズキヒデコ]
聖心会シスター。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。フランス、イタリアに留学。ハワイ大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授(日本近代文学)を経て、国際コミュニオン学会名誉会長。聖心女子大学キリスト教文化研究所研究員・聖心会会員。文学療法、ゲシュタルト・セラピー。日本にはじめてエニアグラムを紹介。カトリック学術研究奨励賞受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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