内容説明
天下を狙う鯨鯢と揶揄された道真の広莫たる知の海淵。無心に学問の道を歩みながら文章博士として学閥抗争をくぐり抜け、ついには宇多天皇の寵臣となり怒涛の出世を果たした菅原道真。その栄華と失脚、そして死後タタリ神から天満天神となり、唐へと海を渡ったとされる道真の生涯を詩歌とともに丹念に繙き、よりリアルな人物像に迫った渾身の一作。
目次
鯨鯢と呼ばれた男
内在する縄文と弥生の血
実利と合理性
讃岐守の時代
等身大のヒューマニズム
とまらぬ栄進、その果てに
遣唐使の廃止
歴史の皮肉
謫居の人
子らの声
梅の回廊
増殖する畏怖 天神誕生まで
“討論”鯨鯢の出自
著者等紹介
東茂美[ヒガシシゲミ]
1953年(昭28)、佐賀県伊万里生れ。成城大学大学院博士課程修了。博士(文学)。現在、福岡女学院大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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獺祭魚の食客@鯨鯢
58
鯨鯢(けいげい)とはクジラのオス(鯨)とメス(鯢)とのことで「大悪人」を意味するそうです。日本史上の秀才はこのような濡れ衣に反論できなかった。 クジラはあれほど巨大な生き物でありながらおとなしく知的な生き物で乱獲された時期がありました。 宇多天皇の引き立てが彼の人生を狂わせましたが、藤原氏はその後ろ暗さから疫病や天災を道真の祟りと思い込みました。 クジラは「ストランディング」という岸に体を乗り上げて自死のような行動をとる場合があるそうです。「鯨鯢」という言葉には何か神掛かったものを感じます。
ちばっち
2
自分の中で鯨🐳は良いイメージなので「鯨鯢」と呼ばれる無念さがあまり伝わってきませんでした。また、筆者が道真を「鯨鯢」と呼ばれるに相応しいスケールの大きい人物と紹介していましたが祖先が新羅へ派遣された事がちょこっと紹介されているだけであまりグローバルなエピソードは出てきませんでした。太宰府に左遷される前に讃岐守をしていた事は今回初めて知りました。ただ白楽天を尊敬し、詩作の才能に溢れている事だけは伝わってきました。2020/04/05