内容説明
人びとの間で密かに共有された“笑い”から、東ドイツ社会を解剖!ドイツ語原文&単語解説付きで語学学習もできる!
目次
第1章 ジョークで知る東ドイツ概観の快感
第2章 政治ジョーク、あるいは苦情
第3章 お役人への常套句ジョーク
第4章 生活ジョーク:ソーシャリ「住む」
第5章 インターナショナル・ジョーク
第6章 どす黒く赤いジョーク
著者等紹介
伸井太一[ノビイタイチ]
ドイツ製品文化・サブカルライター。東京大学大学院、ポツダム大学とハレ大学(ともに旧東ドイツ)などを経て、現在は東京の某女子大学でドイツ現代史の教育・研究に従事
鎌田タベア[カマダタベア]
東ベルリン生まれ。フンボルト大学で日本学を専攻、東海大学に1年間留学。その後、公益財団法人日独協会職員など、約10年にわたり日本に滞在。その間、NHKラジオ「まいにちドイツ語」にも出演。現在はベルリンでフリーランス翻訳者として活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紙狸
23
2022年刊行。東ドイツ(ドイツ民主共和国)の市民がうんだジョークの本。日本人の現代史研究者と東ドイツ生まれの翻訳者の共作。一つ一つのジョークの項目が、日本語訳、ドイツ語原文、解説から構成されている。ジョークを通じて、かつて存在していた社会主義国家の市民が、どんな感情を抱いていたのかが伝わってくる。そういえば近年、東ドイツを対象とした力作(この本もそうだ)が数多く出版されているような気がする。なぜなのだろう。2023/05/26
組織液
19
東ドイツ人民軍の軍事教育の講座にて。少尉「われわれがソ連と友好関係を築いているのは、なぜなのか分かるかね?」直立不動で生徒のシュルツェ「少尉殿、私もなぜなのかずっと不思議に思っていました」いや面白い本でしたw。有名なソ連のアネクドートの東ドイツ版ですね。原文のドイツ語も丁寧な解説付きで掲載されているので、読める人には倍面白いんじゃないでしょうか。当時の社会状況や文化がうまく反映されたジョークが目白押しで、東独の新たな知見も得ることができました。東ドイツのテレビ番組結構人気だったんですね。2023/10/10
nishiyan
18
1990年10月3日まで存在したドイツ民主共和国こと東ドイツで民衆の間で共有されていたジョークをテーマごとに分類し、多くの図版資料と共に東ドイツ社会を解説した本書。独語原文と単語解説を付けた作りは翻訳だけでは味わえないジョークの面白さをより鮮明しており、良くできている。各ジョークを紹介する小見出しの微妙な感じも悪くなかった。政治ジョークの数々の辛辣さも好きだが、第4章の生活ジョークは物不足と長時間労働に悩みながら、時々サボタージュ。西の親戚の支援で暮らす東ドイツ人の実生活が垣間見えて興味深かった。2023/02/12
hitomi
17
読売新聞の解説記事で紹介されていて面白そうだったので。東ドイツがジョーク大国だったとは意外でした。ソ連もそうですが、抑圧されている国では政治家や役人をジョークで風刺することで溜飲を下げていたようです。「はじめに」に書いてあるように「笑わなければやってられない」状況だったんですね。政治家を揶揄するようなジョークを言っただけで秘密警察シュタージに捕まるとか…恐ろしい。正直、解説を読んでも面白さが分かりにくいジョークもありますが、楽しく読めました。写真が豊富で当時の様子がイメージできるのもいいです。2023/10/28
HaruNuevo
14
ドイツ民主共和国の存在が所与のものであった時代、それは今の若い世代には歴史の知識なんだろう、とおっさんくさいことを考えながら、原文と訳文を見比べながら読む。 経済の行き詰まりとソ連の弱体化がDDR消滅の重要な原因であろうが、それ以前からDDR国民にしぶとく批判精神が面々と続いていたことも大切。ただ、ジョークひとつで年単位の禁固刑もありうる社会の中で、である。 体制が規制するのではなく、民衆が相互に監視して規制して集団リンチを加えるような社会は、体制には御し易いのだろうな。2023/11/20