内容説明
生命を“分子の機械”と捉える生命科学への疑問から創出した新しい知「生命誌」。「生命誌」は、ゲノムを基本に、人間も含むあらゆる生物の“歴史”と“関係”を読み解く。ヒトクローン、遺伝子組換えなどの現代生物学の問題に、科学と日常の眼で答える。
目次
1 生命科学から生命誌へ(ゲノムとは何か―生命の謎に挑む;「生きている」とはどういうことか―生命科学から生命誌へ;科学の呪縛を解く;生命誌から持続可能性を考える;生命科学による機械論から生命論へ ほか)
2 生命誌の扉をひらく(生命科学から生命誌へ;人間と自然の関係;文化としての科学;生命の物語;ヒトゲノム・プロジェクト ほか)
著者等紹介
中村桂子[ナカムラケイコ]
1936年東京生まれ。JT生命誌研究館館長。理学博士。東京大学大学院生物化学科修了、江上不二夫(生化学)、渡辺格(分子生物学)らに学ぶ。国立予防衛生研究所をへて、1971年三菱化成生命科学研究所に入り(のち人間・自然研究部長)、日本における「生命科学」創出に関わる。しだいに、生物を分子の機械ととらえ、その構造と機能の解明に終始することになった生命科学に疑問をもち、ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く新しい知「生命誌」を創出。その構想を1993年、JT生命誌研究館として実現、副館長に就任(~2002年3月)。早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
3
柚梨太郎「そして ぼくらは地球」の一節に、「ぼくらの命は この星が宇宙に生まれてから その時からつながっている」という歌詞がある。この歌は、中村さんの生命誌の考え方そのものを体現しているのではないかと思う。一つの細胞の誕生以来、DNAと数十億年の時間の働きで、生命は、今地球上に見られるように、無数の形態をもって繁栄しているけれども、その源は一つ。いわば地球上で展開する一家族である。自然保護の根本的な重要さがそこにあることを、この本によって新たに教えられた。科学書を読むことの楽しさの一つがここにある。 2019/08/15