内容説明
夏目漱石、高村光太郎、村山槐多、森〓外、芥川龍之介…「覗き見る」想像力。西洋美術に触発された日本近代文学の“見ること”の諸相。
目次
1(レオナルド・ダ・ヴィンチと日本近代文学(夏目漱石;高村光太郎;村山槐多)
森〓外の『花子』)
2(日本近代文学とデカダンス;「表現」をめぐる断章)
3(孤独な窃視者の夢想 江戸川乱歩と萩原朔太郎;夢野久作のエロ・グロ・ナンセンス;谷崎潤一郎 女の図像学;映画『狂った一頁』と新感覚派 覚書)
著者等紹介
谷川渥[タニガワアツシ]
1948年生。著書に『鏡と皮膚―芸術のミュトロギア』(ちくま学芸文庫、2001年)、『シュルレアリスムのアメリカ』(みすず書房、2009年)、『肉体の迷宮』(ちくま学芸文庫、2013年)、『文豪たちの西洋美術―夏目漱石から松本清張まで』(河出書房新社、2020年)ほか多数。訳書も多数あり(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コットン
76
日本の近代作家の中でアートに詳しいのは誰か?と問われたら私は先ず夏目漱石をあげるだろう。この本の冒頭も夏目漱石がレオナルド・ダ・ヴィンチを小説の中で取り上げている話から始まりアートの魅力の一端が作家達の作品から垣間見える。また乱歩と荻原朔太郎の関係や夢野久作、谷崎の話もあり面白い。2021/12/03
なる
26
近代日本文学を絵画(ダヴィンチの『モナリザ』)、デカダンス(ボードレールの『悪の華』)、そして耽美やエロ・グロという観点から吟味して解説するという、今までにあまりなかった観点からの解説書。最初に『モナリザ』を紹介したのは夏目漱石で、芸術家でもある高村光太郎や村山槐多からの視点も面白い。ルポルタージュっぽくロダンを紹介したのは森鴎外で、さらには「変態」谷崎潤一郎、「病い」梶井基次郎に芥川龍之介、「犯罪」を覗いた萩原朔太郎、そこから江戸川乱歩や夢野久作、『狂った一頁』から横光利一や川端康成まで及ぶ。2022/04/02
みつ
13
昨年11月6日の朝日新聞書評で取り上げられた本。そこでは「覗き見という特異な観点から日本の近代文学を様々に読み解く」とあるが、特に冒頭2章の漱石・鷗外は、作品と西洋美術との関わり(前者はダ・ヴィンチ、後者はロダン)を述べた点でやや異なる。以下は「憂鬱」「病気」等のキーワードを手がかりに、大正時代のデカダンス、夢野久作のエロ・グロ・ナンセンスとともに、「窃視者」の存在が立ち現れる。乱歩の『屋根裏の散歩者』を始めとする代表作と谷崎の『鍵』を想定していたところ、朔太郎の写真を媒介とした窃視の観点が新たな発見。2022/05/03
timeturner
4
著者の中にもあるんじゃないかと思えるほどの窃視への熱量が感じられる論考集だった。乱歩や朔太郎の隠れ蓑願望には共感できる部分がある。それにしても美学者というのは物凄く広範な知識を身につけていなければならないのだなあ。2022/01/29