出版社内容情報
人類と物語の未来を幻視する、21世紀型スペキュレイティヴ・フィクション。SF界の気鋭による4年ぶりの書き下ろし長篇。
樺山 三英[カバヤマ ミツヒデ]
1977年東京都生まれ。学習院大学文学部卒業。2007年『ジャン=ジャックの自意識の場合』(徳間書店)で日本SF新人賞を受賞しデビュー。2010年、『ハムレット・シンドローム』(小学館ガガガ文庫)でセンス・オブ・ジェンダー賞・話題賞受賞。その他の著作に『ゴースト・オブ・ユートピア』(早川書房、2012年)。
内容説明
敵を求め炎上する“民意”の行き着く先は?蘇った“騎士”と、その行方を追う“探偵”。混沌と化す現代の群衆を、ドン・キホーテはどこへ導くのか?新世代SFの鬼才が人類と物語の未来を問う、21世紀型スペキュレイティヴ・フィクション。
著者等紹介
樺山三英[カバヤマミツヒデ]
1977年、東京都生まれ。学習院大学文学部卒業。2007年、『ジャン=ジャックの自意識の場合』で第八回日本SF新人賞を受賞しデビュー。10年、『ハムレット・シンドローム』で第九回センス・オブ・ジェンダー賞・話題賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つきあかりてるお
4
現代小説だった。探偵が記憶を失ってからはずっと美しいシーンが続き、いつまでも読んでいたかった。この文章を味わうために再読するだろう。また、メタ・フィクション要素をどうでもいいと感じている自分の変化が面白かった。2017/03/02
渡邊利道
4
これは傑作だった。タイトルの通り、『ドン・キホーテ』のあからさまなパロディ、間テクスト性をもてあそびながら探偵ものと現代に蘇った主従の旅を交互に綴り、演劇の舞台から虚構と現実の迷宮へとはまり込み、叙事詩のように展開するクライマックスと行き継ぐ暇のない、それでいて悠々とした語り口で、メタフィクションの本来的な不穏さを取り戻す黙示録・ニーチェ的な結末へと至る。「ドン・キホーテ」に範をとった現代小説は数あるが、この不吉さは素晴らしい。2016/08/29
ろびん
3
元々のドン・キホーテを読んだことがないのが致命的でしたね……、近いうちに読みます……。2020/02/13
Mark.jr
2
古典作品を叩き台にして、全く独自の世界観を作り上げる異能の作家・樺山三英氏。本作はタイトルから分かるように「ドン・キホーテ」を題材にした、初期の高橋源一郎氏の作品を彷彿させるメタフィクション・ポストモダン小説です。虚構や狂気が現実を侵食していくストーリー展開ですが、そもそも原典の「ドン・キホーテ」自体がそういう話なので、実はかなりストレートな本歌取り作品と言えます。ともすれば難解になりがちな(実際、前作「ゴースト・オブ・ユートピア」はかなり難解)氏の小説の中でも、かなり分かり安い部類の作品でしょう。2019/10/10
イツキ
2
突如失踪した財閥の首領を追うためにペット探し専門の探偵が雇われるところから始まる物語。読み進めていくうちに徐々に現実と虚構が境目をなくしていき、現実とは何か虚構とは何かが曖昧になっていく不思議な感覚を味わえる作品です。現代に蘇ったドン・キホーテも印象的でしたがそれ以上に現代日本を連想せずにはいられない常に多数に属さない敵を求めて彷徨う民衆たち【みんな】が印象的でした。「いいえ。雨はモラルを持ちません。だからわたしは、雨具の準備を忘れないようにする。そうすれば自分だけは濡れないで」2017/03/17