内容説明
女と男、“未練”の断章。東京・飯田橋の小さな居酒屋で交錯する、それぞれの人生―どう生きても、ためらいがある。巡り合う人々、連作短篇集。
著者等紹介
佐藤洋二郎[サトウヨウジロウ]
1949年福岡県生まれ。『夏至祭』で野間文芸新人賞、『岬の蛍』で芸術選奨文部大臣新人賞、『イギリス山』で木山捷平文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あつひめ
76
生きることに疲れている彼らが羽を休めに立ち寄るのが飯田橋の居酒屋。お互い、隣り合わせた人の心のモヤモヤはわからない。ただ、そこで過ごす時間がポッカリあいた隙間をふさいでくれる。人って…何で生きるのでしょうね。楽しいとか幸せという感情を味わうことができるから、苦しみや辛さも味わわないと帳尻が合わない。全くバラバラな地名が、人の生き方を思わせてくれた。派手さはないのに、なぜか目の離せない作品で、点訳したい本がまた増えました。佐藤さんの他の作品も読みたくなりました。2015/02/19
キムチ
28
偶然にも海外・二本と2人の男が人生を俯瞰する形での文を読んだ。筆者の世界観の異なりもあろうが、余りにもこちらはペシミスティック。生きてきた軌跡の温度差がよく現れているような。日本各地の温泉を巡る形で男と女の在り様をなぞっている。初めて触れた作者は団塊の世代、非常に古風な文章、佳作と云えない事もないけれど、私には少し紙魚の香りがした。ポジにもネガにも生きうる人生、サイコロのように出た目で決めつけて行くような主人公の考え方に否定的な想いをしてしまった。2014/09/11
はじめさん
15
短編集。忍土とは仏教用語で浄土に対して、苦しみを耐えるこの世の事らしい。短編の題名は津々浦々の土地名。それらの地で暮らす人々のささやかな生活を描く。不倫や母性や父性の喪失などがほとんど。すべての物語に東京にある焼き鳥屋・鳥長がちらりと登場する。/ 残念ながら香川県は出てこないが、お隣徳島が「鳴門」ーー故郷である鳴門に帰ってきた女。かつて鳥長の三軒隣で蕎麦屋を営んでいた頃に同棲していた男との思い出。/ NARUTOの穢土転生の術も、忍土転生の術のほうが、この世と忍、ダブルミーニングでしっかりくるような気も。2016/10/07
ぴきん
4
渇いたときの水のように、今のわたしに必要な文章だった。ひとつ、ひとつ、ゴクリとあるいは、ぴちゃぴちゃと飲み込んでいきました。惹かれてしまった。2014/11/19
いつでも母さん
2
14の土地からなる短篇集。東京飯田橋の居酒屋『鳥長』がイイかんじでリンクする。久留米・富山の章がよかったが、全体に凄く心に残る・・まではいかないがたんたんと読了し、これも『人生』とちょっと切なかったりした。『浄土』に対するこの世=『忍土』かぁ・・私の忍土はまだまだ続くのだろうなぁ・・いつか『生きてるだけで丸儲け』の境地に辿り着きたいと思うのみだが。2014/08/30