感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
8
素晴らしかった。葛原妙子作品の、百首遊行という贅沢な一冊。“すべての短歌は広義の本歌を持っている” として、古今東西へと“広義の本歌”を探し求めて手繰り寄せてくる教養に圧倒される。鑑賞にことよせてどこまでも塚本邦雄の世界が広がっていく…という印象もありつつ、葛原の幻視の眺めを解いていく様は流石に見事だった。葛原妙子と塚本邦雄という稀有な才能の出会い、そこに起きた閃光を少しだけ垣間見せてもらったような。(相変わらず女性観は引っかかるけれどw)2025/09/05
月音
7
他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水──。読み手を幽明の境へと招くこの歌の主に、かつて「幻視の女王」という桂冠を捧げたのは、誰あろう本書の著者である。創造の世界で響きあう点で、著者ほど葛原作品を語るに相応しい人物はいまい。例えば、桜の詠に『源氏物語』中の用例をあげ、色とりどりの桜の景を現出、幻の鉱脈を中空に描き、花の奥に銹び煙る銀を見る。めくるめくイメージの二重奏は、新たな幻想世界を織りなす。玲瓏たる珠の響き、奇(くす)しき華の彩に、陶然として時を忘れた。⇒続2025/03/08
-
- 和書
- 未成年