内容説明
病をえた人とともに過ごした日々。濃密な時間は歌に溶け出し、風や水となって胸内に沁みる哀傷のプリズム。
目次
1(ハビタブルゾーン)
2(幽明;癒の水辺;芒眉;朝のテラス;光わすれず)
3(きみ逝く;不在;虹の魂;碑なき墓処)
4(つきかげの真珠;存在の翳;友逝く;魂明り)
著者等紹介
大塚寅彦[オオツカトラヒコ]
1961年5月17日、愛知県生まれ。1985年『刺青天使』以降歌集五冊を上梓。中部短歌会「短歌」編集発行人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はたえす
1
あとがきによると本歌集は著者の亡くなったパートナーに対する挽歌として編まれたとのこと。なので、全編を通して闘病ややがて迎える死、そしてその後の喪失感などが詠まれている。特に印象に残ったのは第三章の「不在」という連作で「あじさゐの色うつろへど君おらぬ日々変はるなし花毬に降る雨」「空見ればおほき虚なり花咲けば色むなしきよ君在らぬ世は」など幻想的な描写とパートナー不在の喪失感が歌われるなか置かれた「「だつて君は死んでゐるだろ」夢に見し面に言ひきふいの目覚めは」というストレートな歌にハッとさせられた。2023/05/26