著者等紹介
松波太郎[マツナミタロウ]
1982年三重県生まれ。文學界新人賞、野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いっち
33
私小説に近いフィクション。主人公のマツナミは、著者本人だと思われる。カルチャーセンターは、小説を書いて、読んで、合評するスクール。本書は三部構成で、①マツナミが語り手でカルチャースクールでの出来事がメイン。②カルチャーセンターに通うニシハラの小説『万華鏡』。③作家、編集者、著者のコメント。②と③があることで、他の小説にはない独自性が出ている。②はカルチャーセンターで実際に書かれた作品。著者の作品ではなく、著者が感銘を受けた作品。③は、①や②を読んだコメントが作品になっている。小説は自由だとあらためて思う。2022/10/15
そうたそ
12
★★★☆☆ 何とも不思議な小説。著者自身の青春時代を思わせる作家を目指す者の集うカルチャーセンターでの話から、冒頭から話題に出るカルチャーセンターでの若き才能・ニシハラくんによる作「万華鏡」が実際に掲載される。そして、その後作家たちによる「万華鏡」の評が――、という何と評すべきかと迷ってしまうような内容。実際の所、「万華鏡」はやはり途中からは良く言えば前衛的、悪く言うなら支離滅裂でよく分からなかったが、これはやはり著者による鎮魂の作ということなのか。最後の最後には一つの作としてまとまった感はある。2022/08/24
kuukazoo
10
初めて読む作家。変だったしよくわからなかった。変なのは嫌いじゃないしわからなくても小説を味わうことはできる。全体の構成が四次元なので時空間が歪んでおりいきなり未来や過去や現在に飛ぶし登場人物の会話が断片的でわかるようなわからないような。小説内小説をめぐるドラマっぽい枠組みがあったり小説を書くことの葛藤があったりフィクションと現実の境目を何度も確認したりこんな小説ありですか?という問いでもあったり。意図的に混沌な構成であるこの小説をよくある「普通」の構成にしたら決定的な何かが失われるんだろうなと思った。2022/10/31
たおちゃん
7
かつて"カルチャーセンター"という場所で著者マツナミと一緒に小説を読み、書き、会話ともつかない会話を交わし、そして早逝したニシハラくんの遺した『万華鏡』という小説、それにまつわる記憶。ただそれは単なる記憶の羅列にはとどまらず、自らの文学との向き合い方や小説を書くことの意義、あるいはそれらにまつわる困惑など、境目を常に揺れ移ろわせて語られる。その言葉の流れに身を置くことがただただ心地よい。これは鎮魂なのかな。これはなんなの? 小説なの? と思いつつも何度もそこに身を沈め、また浮かび、忘れ、思い出す。何度も。2022/06/20
kyon
3
「オブセッション」という言葉を初めて知った。作中に「関誠」なる短編のようなものが出てきて、それについての話に出てきた言葉。すべての小説において、著者は多かれ少なかれ、これに突き動かされて書いているし、こうしている私もこの読書体験を記憶にとどめたくて書いているのだ、と思った。「魔物が潜んでいる」って表現はどうかという気もするけれど、この小説の主人公にも、忘れたくないと固執しながら読んで記録する私にも、しっくりときた。2023/12/01
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